前回の続きから。まだかなりあるのだが、ちまちまと進めていこう。千里の道も近道で、という格言はないのだ。
独学ということで、知識をインプットする必要があるが、何をインプットすればいいか。まず、共感するようなインプットは危険だという。
こういうインプットばかりしているとバカになる
(p.110)
共感できるというのは、既に同種の知識が入っているのだからコスパが悪い。新しい意見を取り込むことで新しい視点が生まれるのだ。だから、違う意見に触れることが重要なのだ。
どんなに知的水準の高い人でも「似たような意見や志向」を持った人たちが集まると知的生産のクオリティは低下してしまう
(p.111)
ということで、取り込むべき内容が分かった。もう一つ重要なのは必要ないインプットの捨て方である。ゴミのようなインプットを繰り返していてはゴミしか増えない。それに対する秘策が、
結論から言えば、ゴミの峻別は結構難しいので、まずは名著・古典と言われているもの、つまり「ハズレ」のなさそうな評価の確立したインプットをしっかり押さえる
(p.114)
という意外と平凡な戦略だ。確かに名著と呼ばれるものは長い時代にわたって支持されるだけあって、それなりの理由はあるのだ。このすぐ後にチェ・ゲバラの愛読書が紹介されているのだが、確かに古典的なものばかりだ。その中に、解析幾何学の演習というのがあって、
最後の解析幾何学というのは、一体どうして読もうと思ったのか気になりますが
(p.119)
これは、ロジカルな考え方を衰えさせず、磨いて光った状態にするためだと思われる。勘だけど。
また、たくさん本を読んでいるという人に対しても、
深く鋭く読むべき本を見つけるために、大量の本を浅く流し読みしている
(p.116)
これは確かにいえそうだ。ちなみに私の場合は全部浅いような気がする。
もう一つ、読むタイミングについて。夏目漱石の本を十代で読むのと三十代、四十代で読むのとでは見え方が違ってくる、ということはよく言われているのだが、長く生きていると経験も増えるし感性も変わってくるから当然なのだ。解釈が変化したとしても、それは、
「いま、ここ」にいる私自身の置かれた文脈が、かつてのそれとは違うから
(p.125)
というのだが、お洒落な表現だと思う。
(つづく)
知的戦闘力を高める 独学の技法
山口 周 著
ダイヤモンド社
ISBN: 978-4478103395