Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

たぶんねこ

今日は「しゃばけ」シリーズの何作目だっけ。「たぶんねこ」を読んだ。

6本の作品が入っているが、最後の「終」はエピローグみたいなので実質5本。タイトルが面白い。文庫本のイラストを見た限りでは、どう見ても虎だし。

2本目の「こいさがし」はお見合いがややこしくなる話。

「そんな簡単にいくかねえ。何しろ縁談は、人と人がするもんだからさ」
(p.97)

何か分かる。縁談というのはそう簡単に一直線にゴールに向かうような性質のものではないのだ。
この話に出てくる「於こん」さんは十四歳。十五でねえやが嫁に行くような感じで嫁入りの修行中だが、

江戸では十三にもなれば、嫁にいけるのだ。十五と聞けば、もう娘盛りと言われる。
(p.87)

これが何をやらせてもヘタというのが面白いが、「於こん」という名前がなかなか素晴らしい。何が素晴らしいかは読めば分かる。

4本目の「みどりのたま」は、記憶喪失の人…といっても皆さんご存知のあの人とすぐ分かるあの人が、だんだん記憶を取り戻して行く話。途中に出てくるスリの二人が馬鹿コンビで、最初にコテンパンにやられているのに何かとかかわりたがる。

5本目の作品がタイトルに出てきた「たぶんねこ」。この話の主人公は月丸。実は幽霊である。幽霊なのに神の庭に住んでいて、住んでいたのにわざわざ江戸に出てきたがる。何が心残りで成仏しないのかなかなか分からない。とりあえず猫に化けて吉原に住みたいというのだ。猫なら夜だけ現れても不審には見えないだろうというのは説得力があるが、よくそんなこと思いつくなぁ。この幽霊が化けたのが、

鳴家が指さした先に、多分猫と呼ばれたものが現れた
(p.290)

幽霊だから化け猫だね。それはそれで怖い。

 

たぶんねこ
畠中 恵 著
新潮文庫
ISBN: 978-4101461335