新年早々こんな本なのか、と思ったが、まあいいか。
魔術だけでなく、錬金術、占い師、魔女、怪物、幽霊などのオカルト全般における知識が浅く広く紹介されている。そちらの世界に興味がある人にとっては、それなりに面白いと思う。ただし、訳者あとがきによれば、
このシリーズはとくにハイティーンたちのためにフィクションやノンフィクションのすぐれた単行本を集めたもの
(p.269)
とあるように、あまり内容に踏み込んだものではないため、本気で詳しく知りたいのなら他の本をあたる必要があるだろう。位置づけとしては、入門者向けというところ。
常人には理解できないことができるのが魔術であるなら、先進的な知識や技術を持つ人はそれを持たない人からは魔術師のように見えるのである。例えばアグリッパ(1486-1535)は妖術使いといわれた理由として、遠い世界で起こっていることを知っていたからだとして、
彼はほとんどあらゆる国々の賢人たちと広く文通を交わしていた(アグリッパは八ヵ国のことばを知っていた)ので、彼らの手紙のおかげで世界の最新のニュースに精通していたということだけのことだった。
(p.59)
インターネットを知らない人から見れば、ネットでググれる人は魔術師のように見えるだろう。
エピソード魔法の歴史―黒魔術と白魔術
G.ジェニングズ 著
市場 泰男 翻訳
社会思想社
教養文庫
ISBN: 4390110101