Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

「なんとかする」子どもの貧困 (2)

昨日書いた書評の続きである。埼玉県の学習支援教室を紹介する所にサラっと出てきた次の文が気になった。

ただ、子どもを叱る、さとすことができなくなっているのも問題だと感じる。
(p.103)

昔は悪いことをした子どもは大人に叱られたものだ。今は知らない子供を叱る人が減っている。下手をしたら声をかけただけでも事件にされて逮捕されてしまう。

叱ってやらないと、悪い事だということに気付かない。そしてなにより、メンタルが鍛えられないのではないかと思う。40年前と今の子供の最大の違いはメンタルの弱さのような気がする。

第三章では明石市の「離婚時の養育費用取り決め」等の取り組みを紹介している。市長とのインタビュー形式で、市長曰く、子供の貧困対策をしているつもりはなく、全ての子供に対策しているのだ、とのこと。財源は一体どうなっているのか。インタビュアーがまず突っ込む。

しかし、国でも民主政権時に「支出を見直せば十六兆円出てくる」と言って、実際に出てこなかった経験がある。
(p.134)

ありましたよね、埋蔵金。結局発見できなかったというオチが今の民主党系列の諸党の評価に引き継がれているような気もするが、明石市の場合は戦略があった。

年収七〇〇万円前後の「中の上」の子育て世代を呼び込む
(p.134)

これによりフィードバックが発生して財政が改善する、ていうか実際になっているところが面白い。ただ、これは明石市阪神という人工密集地帯の一部であり、周囲の地域があまりウマくやれていないという条件が重なっていることも影響しているだろう。つまり、周囲からの人口移動が見込める場所ならではの戦略ではないか。あくまで私見だが、この少子化の時代によくうまく行ってるなと思ったりする。

他にもいろいろ話題があって、フードバンクとか、リーディングスキルテストとか、唐突っぽい気もするが、いろんな切り口から見ようとしているのは面白い。いろいろ書きたいことはあるがどう書いてもまとまらず挫折したので、最後に贈与税問題を紹介したい。

親や祖父部からなら無税、親戚または他人からなら課税、その差、最大四五〇万円。
(p.226)

教育資金は直系家族から貰えば非課税なのだが、他人からだと贈与税がかかる。私立大学に行かせようとしたら数百万円かかるのだが、親戚から教育資金を提供してもらうと、110万円を超えた金額は課税されてしまう。課税額を上乗せした金額をもらえば一応解決することはするが、何かおかしな気がする。


「なんとかする」子どもの貧困
湯浅 誠 著
角川新書
ISBN: 978-4040821733