Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

くろご

時代物です。主人公は鉄砲磨同心の流山数馬。鉄砲磨同心というのは聞きなれない役職ですが、

鉄砲磨同心とは、その名の通り、鉄砲を磨く役人のことである。
(p.20)

そのまんまやんけ。今の言葉でいえば銃のメンテ要員ですね。しかし数馬は鉄砲鍛冶の出身なので、鉄砲の知識がハンパないです。オタクです。それでいろんな事件に巻き込まれるわけです。鉄砲鍛冶といえば、子連れ狼がころがしている乳母車に連発銃が装備されているのですが、連発銃を開発した職人が弟子に説教するシーンがあります。それを思い出させるシーンがでてきます。

「あげく、創意工夫を忘れ、同じことを厭きもせず繰り返してきた。鉄砲造りに携わる者として、恥ずかしい限りだ」
(p.67)

何事も競争することで創意工夫が生まれる、結果、技術が進歩するわけですね。

数馬は鉄砲オタクなので、途中、凶器になった馬上筒を検証するシーンがあります。馬上筒というのは馬に乗りながら撃てるように小型化した銃だったと思いますが、

「この馬上筒は凶器ではありません。撃っては弾は出ません」
(p.146)

このシーンは先日紹介した「極大射程」を思い出しますね。

この物語、黒子党という隠密的な殺し集団が出てきます。タイトルが「くろご」だから、「くろごとう」と読むのですかね。オリゴ糖みたいな。首領との密会シーンはカムイ伝を思い出すし、いろんな時代モノのコミックを読んでいたら二倍楽しめるかもしれません。コミックといえば、

「俺も一匹、見たことがある。黒子の装束を纏った奴を。黒子が集まって黒子党か。捻りもなにもないな」
(p.150)

個人的には、黒子というのは、うる星やつら面堂了子の護衛団のイメージなんですけどね。


くろご
集英社文庫
中谷 航太郎 著
ISBN: 978-4087456417