Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

自警録

面白いので昨日の続きで書いてしまいます。新渡戸稲造さんの「自警録」です。「心のもちかた」という副題が付いていますが、人間はどう生きるべきかという啓蒙書です。

一度は読んでおくべき一冊かもしれません。といいつつ私はこの歳【謎】になるまで読んだことがなかったのですが。十代で読みたかったです。

かつまた人を威して克つのは、みずから恥ずべき下劣なる勝利である。
(p.55)

これは「文明時代の強き力」というタイトルが付いた節ですが、力で勝つのは最低の勝ち方だというのです。確かにヤクザなやり方ですね。あるいは外交的な。

もっとも、教条主義的な話だけでなく、結構俗な主張が出てくるのが面白い。

僕の信ずるところでは、世の中のことは判然たる意志を持つ必要のないことが多い。換言すればどちらでもよいことが多い。
(p.74)

これは「世の中には譲って差支えないことが多い」という節ですが、何でもかんでも固執するなということですかね。個人的には「~ですが、こだわりません」という表現が好みで、多用していますが、こだわりませんと書くと却って拘っているようなイメージがありますよね。レトリックとして使っているのです。

相手の人を疑うことなれ、相手の人に好意をもってすれば、彼らもまた君に対し好意を懐くものであると。
(p.93)

個人的には、むやみに他人を信用しては危険だと思います。信用することは理想かもしれませんが、悪意を持つ人がいることも事実だし、そのことは新渡戸さんも承知しているのですが、その上でなお「疑うなかれ」と言い切ってしまうのはスゴイと思います。

次回に続きます。


自警録
新渡戸 稲造 著
講談社学術文庫
ISBN: 978-4061585676