Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

ヒッコリー・ロードの殺人

推理小説率が最近高いようですが、今回はアガサ・クリスティーさんのポワロが出てくる作品から、ヒッコリー・ロードの殺人。

ヒッコリーロード26番地の寮で殺人事件が起こります。名探偵ポワロがこれに挑むことになりますが、その前にポワロは寮で発生している奇妙な盗難事件に悩むことになります。盗まれたものは次の通り。

夜会靴(新しい靴で、片方だけ)
ブレスレット(イミテーション)
化粧用のコンパクト
口紅
ダイヤモンドの指輪(スープ皿の中から発見された)
聴診器
イヤリング
シガレットライター
古いフランネルのズボン
電球
箱入りのチョコレート
絹のスカーフ(ずたずたに切られているのが発見された)
リュックサック(右と同じ)
ホウ酸の粉末
浴用塩
料理の本
(pp.16-17)

このリストを示されて、ポワロは「おめでとう」と言うのですが、並の感性ではなさそうですね。わけがわかりません。ポワロと学生達のジェネレーションギャップも面白いです。いろいろ話がズレてしまいます。しかしポワロは寛容です。

わたしの若いころには、若者たちは小人に神智学の本を貸したり、メーテルリンクの『青い鳥』について議論したものです。
(p.83)

青い鳥の議論は私も若い頃にしましたね。日本では子供向けの絵本で読んだ人が多いかもしれませんが、実はなかなか奥が深い物語です。ところで、ポワロの出てくる推理小説は、会話の駆け引きのようなものがやはり絶妙で面白い。犯人は誰なのか。怪しい人が多すぎるので、シャープ警部が

結局人殺しのできないやつはいないということですか
(p.143)

と言うと、するとポワロは、

わたしはしばしば、そうじゃないかと思うことがある
(p.143)

とかいう。そういえば「カーテン」を読んだのはいつだったかな。クイーンの四部作を読んでいたからかもしれませんが、犯人を当てました。

ハバード夫人との会話も絶妙です。

でも、こんなことは、あなたには興味がないでしょうね
(p.230)

と言ったらポワロは、

わたしはすべてに興味がありますよ。
(p.230)

とかいう。ああいえばこういう、みたいな感じですね。。

ところで、この話では結局 3人も殺されてしまうのですが、私の思うに、最初にポワロが寮に呼ばれて講演した後にこんなことを言っています。

とにかく、いまただちに警察を呼ぶべきです。一刻も猶予すべきではありません
(p.68)

こんなこと言わなかったら誰も死ななかったんじゃないですか? 実は真犯人はポワロで完全犯罪成立なのでは。


ヒッコリー・ロードの殺人
アガサ・クリスティー
高橋 豊 翻訳
ハヤカワ文庫
ISBN: 978-4151300264