Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

侵入 レベル7 (1)

今日は昨日紹介した「侵入 レベル7」について、少し書きます。

ストーリーとしてはサイバー小説というよりはSFです。物理学的根拠から逸脱した現実性のなさそうな設定ですが、世の中案外ヘンなことが普通に進行しているので、既に謎のネットワークがインターネットとは違う世界で暗躍していても別に不思議ではないです。裏インターネット。

いろんな固有名詞が出てくるので、知っていれば面白いのですが、知らないと分からないところも多々あります。

地球が静止する日』という映画だ。
(p.69)

この映画は 2017年現在「地球の静止する日」と呼ばれています。「地球が静止する日」は2008年に発表された、同じストーリーのリメイク版がそう呼ばれています。ややこしや。この小説は 1987 年に書かれているのです。

主人公のピーター・キャシディは物理学者。見た感じはハッカーというよりエンジニアですね。情報工学

ピーターには覚えられるものと、覚えられないものがあった。
(p.12)

誰だってそうかもしれませんが。ちなみに、私は人名が覚えられません。顔はすぐ覚えるのですが。このピーターがアカウントを盗まれてしまって大犯罪の犯人と誤解されてしまいます。それも本人が制御できない問題ならともかく、

あのときキャプテンと……そう、デヴィッドの二人が肩ごしにスクリーンをのぞいて……ぼくのIDコードを記憶したんだ。
(p.193)

こんなマヌケなやり方で盗まれたのでは言い訳のしようもありません。このIDは踏み台になるだけで、さらにレベル7にアクセスするためには、ハント・コードというどこでもドアみたいな最強アカウントが必要なのですが、そちらも管理者が漏らしたのではないか、という話になっています。パスワードをコンピュータを使って破ったらカッコイイのかもしれませんが、パスワードを除き見で盗む、というのはリアルなんです。

この話の年代はまだ今のようにインターネットがインフラとして成熟していないので、パソコン・ネットワーク(p.75) のようなモノが出てきます。今の人にはパソコン通信なんて通じないでしょうから、時代の進化速度はたいしたものです。

この秘密の端末の周波数と信号波の特徴を知っていて
(p.124)

といわれてもピンと来ないでしょう。モデムとか使う人、今はいませんからね。しかし(多分)今も変わらないのはハッカーとかクラッカーの皆さんの精神構造です。

彼らは“データを発見できる者は、データを所有してよい”という倫理規範にしたがって行動した。
(p.95)

誰でもアクセスできるデータは公開されている、自由に参照できる、というのはある意味インターネットの大原則ですが、間違って公開してしまったデータもそうなのか、という所で倫理観が分かれるはずです。

長くなりそうなので、明日に続きます。


侵入 レベル7
扶桑社ミステリー
ダーク ハンソン 著
天野 隆司 訳
ISBN: 978-4594003937