Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

妖異

今日紹介するのは、昨日前ふりしたミステリの短編集。傑作短編集(4)とタイトルに付いているから、この前に3冊あるはずだけど、そちらは全然読んでない。

収録されているのは6作品、まず、綾辻行人さん作「人形」。ミステリというよりも怪談。主人公は作家。人形にどんどん体を取られてしまう。

どんな時でもいま書いている作品のことが頭のどこかにあって、それについて考えている。
(p.25)

一日中仕事らしい。作家は魂を削って作品を書くというが、そういうことなのかな。

2つ目は石川喬司さんの「エーゲ海の殺人」。これはミステリですね。殺人事件のようだが、主人公が行方不明になってしまう。手紙の形式で話が進んでいくのだが、どこが本当なのかよく分からない。

もっとも、手紙なんてものは、いくらでもウソ八百が書けますので、私の言葉も保証の限りではありませんが……。
(p.87)

3つ目は大下宇陀児さんの「魔法街」。江戸川乱歩の作品のに近い雰囲気を感じた。ヘンな博士とか出てくるのが昔の推理小説みたいで妙に古風で趣がある。しかし何となく分からない作品だ。

4つめは大坪砂男さんの「零人」。ミステリというよりはオカルトな感じがする。これも怪談かな。

自分の前に、もう一人の自分が現れたとき、それに話しかけられた者は、必ず墓穴の用意をしなくてはならんのだ。
(p.140)

ドッペルゲンガーですな。この理論だと、先に声をかけた者の勝ちだ。

5つ目は加納一朗さんの「ギズモ」。SFです。宇宙生命体がテレビの中に住み着いてしまう。空間分子変換製造機というわけのわからないメカが出てくる。要するに何でも作れる機械だ。あなたなら、何を作ります? ベタな話だが、やはりお金なのかな。この話では、ダイヤモンドを作ることにしたのだが、すごいダイヤが出てくる。

最後の作品は、香山滋さんの「ソロモンの城」。これはインディジョーンズ。冒険活劇的な物語。この本の半分はこの物語が占めている。インドの獅子を調べに行くという話がいつの間にかソロモンの秘宝を探すことになってしまう。鍵はソロモンの桃。次から次へとシーンが切り替わってわけが分からないからまとめようもない。1ページ中に1度も改行しないようなオールドスタイルの文体は、ラノベに慣れている読者だとヘビーすぎて途中でクラクラするかもしれないが、ある程度我慢して読み続けたらそこから先は止められなくなってしまう。


日本推理作家協会賞受賞作家 傑作短編集(4) 妖異
綾辻行人石川喬司大下宇陀児大坪砂男加納一朗香山滋
双葉文庫
ISBN: 978-4575658989