Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

神の守り人〈下〉帰還編

昨日紹介した「神の守り人」の下巻、帰還編です。

【honto 電子書籍】守り人シリーズ電子版 6.神の守り人 下 帰還編

逃亡はピンチの連続の後、結局失敗して連れ戻されてしまうのですが、その前にまず狼に襲われます。バルサも頑張るのですが、

だが、狼はあまりに多かった。
(p.45)

万事休すというところでアスラが究極魔神タルハマヤを召還してしまい、たまや~、という感じでアッという間に狼を殲滅します。後日、バルサがアスラに言うのですが、

……狼を殺したときの、あんたの顔は、とても恐ろしかったよ
(p.139)

そりゃ怖いですわ。人間と神とでは勝負になりません。

この後、一行は罠にかかってバルサは吊り橋を切られて凍てついた川に落ちてしまいます。よく川に落ちる人なのです。今回は今までにも増してバルサが瀕死の重傷になりますが、こんなことを言っています。

人に頼れば、心に隙が生まれる。つらくて、弱みを見せれば、だれかがそれを利用するかもしれない。――命は、自分の身体と頭とで守れる分だけ続いていくもの。自分で守れないときは、ここまでの命だったと、諦めるしかない。
(p.111)

死にかけていたときのバルサの言葉ですが、割り切ってますね。全編を通じて、バルサの思想は独特で、今の人達【謎】とはちょっと違った印象を感じます。何か近いキャラはいないかなと思ったけど、例えば「永遠の0」のパイロットの宮部久蔵かな。刃物を振り回すというところでは木枯らし紋次郎なんかかなり似てます。戦い優先ではなくとにかく関わりたくない的なところも。プリキュアって「勝つ」よりも「負けない」優先らしいですが、そういう思想? 宮本武蔵もそうですよね、勝てない相手とは戦わない系。

そもそも、敵を殺せばそれで解決ではないという話も。

憎いやつを殺せば、すべて片がつくわけじゃない。
(p.135)

結局、自分の中にいる敵が問題なんですよね。


神の守り人〈下〉帰還編
上橋 菜穂子 著
新潮文庫
ISBN: 978-4101302775