Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

人類と気候の10万年史

アメリカが1抜けた、みたいなことになって最近話題になっている地球温暖化対策だが、 この本は地球の気候を10万年という長いスパンで紹介している。

ざっくり紹介すれば、こんな感じ。

この300万年ほどは、大きく見ると寒冷化が進行している。また、温暖な時代と寒冷な時代の振幅がしだいに大きくなってきている。
(p.32)
温暖な時代は、驚くほど等間隔に、10万年ほどの時間をおいて繰り返している。
(p.34)

p.33 のグラフを見ると、今は10万年周期の中では温暖な時代にあたることがわかる。しかし、地球が今まで経験したことのないような高温になっているわけではない。極端な話をすれば、大昔に南極にも氷がない時代があったわけだし、

今から1億年前から7000万年前頃の地球は今よりはるかに暖かく、北極にも南極にもいわるる氷床が存在しなかった。
(p.29)

まあそこまで極端な過去にジャンプしたら現在の地球とはかけ離れていてもおかしくないのだが。 もう少し近い時代の話もある。 第三章からは、福井県南部にある水月湖の泥を使って過去の気候を細かく推測する話が出てくる。ちなみに、この本は、かなりの部分が水月湖の調査と分析結果の紹介になっている。 その調査の結果分かったのは、

海洋堆積物や南極の氷の分析結果から、今から12万年前頃に気候が温暖だったことはまず確実である。 海面は現在よりも高いところにあり、平均気温も現在よりも1℃ほど高かったとする説が有力になっている。
(p.142)

12万年前という、10万年周期でいえば前回にあたる時代に、今の地球よりも温暖な気候の時代があったのだ。 なぜ10万年周期で気候が変化するかというと、ミランコビッチ氏が提唱した、地球の公転軌道が10万年周期で変化し、その影響で気温も変化するという説が紹介されている。

しかし12万年前というのは10万年周期からずれている。ミランコビッチ理論の通りなら、既に地球は氷河期に向かっていてもおかしくないのだ。 なぜ寒冷化しないかが謎となるが、この本はこの点にも触れている。実はミランコビッチ理論から予測される値と異なる値が観察されている物質があるという。 もちろん、二酸化炭素はその1つなのだが、それはいったいいつ増え始めたのか?

実際のデータを見ると、メタンは5000年前、二酸化炭素は 8000年前頃から、ミランコビッチ理論で予測される傾向を大きく外れて増加していた。ラジマン教授はこの原因を、アジアにおける水田農耕の普及、およびヨーロッパ人による大規模な森林破壊にあると主張して学会に衝撃を与えた。
(p.160)

p.161 にはグラフが出ている。 ここ数十年の話かと思ったら、結構とんでもない話で、もしこの説の通りなら、現在温暖化が進んでいる原因は数千年前から発生しているわけで、今やっている温暖化対策って大丈夫なの、ということになりかねない。

ちなみに、個人的には現在のCO2規制は茶番だと思っているので、無駄なジタバタ、勝手にやってくれ的なスタンスなのだが、一つ興味深いと思ったのは、地球が寒冷化するときのメカニズムである。

地球の寒冷化は時として暴走することが知られている。
(p.30)
雪や氷の白い色は太陽エネルギーを反射してしまうため、地表が雪や氷で覆われると寒冷化に拍車がかかる。
(p.30)

だったら、太陽光を反射するようなシートで地表を覆ってしまえば温暖化は防げるのではないですかね。

全部白いパネルで覆うというのも不毛だろうし、おそらく、赤道に近いある程度の部分を覆う。あるいは太陽発電パネルのようなもので覆って、太陽エネルギーを熱以外のエネルギーに変換する。電気にしたところで最終的に熱エネルギーになったらトータルは変わらないが、地球規模のエアコンを設置して、熱は地中とか、宇宙とか、大気の温度を上げないようなところに蓄熱するようなやり方もあるのではないか。発想がデカすぎるような気もするけど。

ところで、仮に人類の叡智が勝利して、無事温暖化が阻止できたとして、その後は氷河期が来るかもしれないのだが、そこはオッケーなのだろうか。それはそれでヤバいような気がしないでもないのだが。


人類と気候の10万年史
中川 毅 著
講談社ブルーバックス
ISBN: 978-4065020043