Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

あそびの時間

私は昔、ゲーセンに入り浸っていたことがある。一日中いるから店員と仲良くなって、勝手にコーヒーを持ってきてくれるようになった。その店は、コーヒー1杯は無料サービスだった。その頃のゲーセンは危ない奴らの行く場所だった。プリクラやUFOキャッチャーが出始めた頃から様子がおかしくなった。ほぼ男しかいないゲーセンに女の子が来るようになった。しばらくメダルゲームでコソコソと遊んでいたが、完全にプリクラに占領された頃、足を洗ったから、今のゲーセンはどうだか知らない。

そういう黒過去がある人ならば、この本はリアルだ。ストーリーはゲーセンでバイトする主人公、小鳥遊の何だかよくわからない日常の話。

ゲームが好きだから……そんな理由だけでいつの間にか友達になって、また別の誰かと出会って一緒にゲームやって、また友達になって……
(p.69)

そういう世界はリアルに確かにあったけど、

「どこからか知らないけど、わざわざ遠征しに来たのかな」
(p.80)

遠征はいなかったなぁ、早稲田を受験しに高田馬場に来た奴がゲーセンに来たことがあった。北海道から来たとか言ってた。といっても、その人は入試のために来たわけで別に遠征じゃないし。その頃の高田馬場にあったナムコ直営店はギャラガカンストしたゲーマー達のたまり場で、普通のゲーマーには聖地だったのかもしれない。ドルアーガの塔をクリアしたのもその辺りのチームだったと思うけど、2playerスタートのボタンを押すとか、どうすればそんなの思いつくのか想像できない。要するにヘンな奴が多かったから、面白かったということだ。

ただ、この話、ゲーセンの描写はリアルなんだけど、主人公の小鳥遊とか、遠征に来る13歳の少女のノラクロとか、やたらリアリティがない。フィクションにリアリティを求める方がおかしいのかもしれないが、中学生でゲームセンターで一番なんて、現実世界では私は1人しか知らないし。あーでもいたことはいたのか。反射神経とか集中力とか、年齢的に未完成だとアレかなと思うけど、中学生棋士も新記録出してるし、時代は中学生なのか。


あそびの時間 暗黒遊戯昇天編
本岡 冬成 著
九韻寺51号 イラスト
ガガガ文庫
ISBN: 978-4094513677