Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

鳥の会議

この本には「鳥の会議」「鳥のらくご」2つの話が入っている。

主人公は中学生。悪い奴らが大体友達。それもハンパない。友達の神永は父親を殺す。ぼく(篠田)はバラバラにして捨ててしまえばいいという。

お父さんも喜ぶんじゃないかとぼくは思った。
(p.80)

実際、そのお父さんは「お前にやられるなら本望や」(p.68) と言っている。この話、ボコられたシーンから始まって、喧嘩三昧でとにかくいい所がないのだが、何かリアルなのは関西弁のせいなのか。私は中学生のときはマジメな生徒だったから、この世界は全然分からないのに、本当にリアルな感じがする。

とにかく、この種の話が合わない人には読み辛いかもしれない。登場人物の中では神永のおばあちゃんが凄い。ある日突然いなくなる。ぼくと三上、長田はおばあちゃんを探しにいく。一体どこにいるのか。

自分がどこにいるのかわからなくなってしまったのだ。
(p.114)

どこにいるのか分からないとか、何でここにいるのか分からないとか、そういうことは現実世界でよくあることなのだ。それに気付いたときは危ない。ヤバい。

これが1つ目の「鳥の会議」という作品。そして、続く「鳥のらくご」がさらに異様な作品。登場人物は「鳥の会議」と同じなのだが、夢を見ているような奇妙な世界の中にいる。

キバは私に刺さった。どこにだったか。わたしから少し離れた。いやあれは、わたしを抱えた、女のわたしだった。キバが刺さったのは、わたしを抱えたわたしだった。
(p.162)

夢日記を読んでいるかのようだ。わけが分からないというよりは、無理に分かろうとすると壊れてしまいそうな感じ。


鳥の会議
山下澄人 著
河出文庫
ISBN: 978-4309023946