Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

ブラック企業に勤めております

中途採用で入った会社がブラックだった。ということになるとシリアスに超暗い話になるか、ドタバタコメディになるか、どちらかしかなさそうだけど、この話は後者の軽い系ですね。

普通の企業とブラックって何が違うかというと、一つは「できることからやろう」が普通の企業で、ブラックは「できないこともやれ」みたいな。できないんだけど。しかも、できないヤツが集まってくる、それがブラック。

この本はブラックあるあるかなと思ったのだけど、Amazon の書評とか見るとどうも厳しい意見が多いような気がする。個人的には気軽に楽しく面白く読めたような気がしたけど、一体この話のどこが気に入らないのだろうか、よく考えてみると、もしかしたら本物のブラックを知っている人にとっては「こんなのブラックじゃない」ということかな。フィクションなんだからリアルを追求しても仕方ないような気がするけど、本物はこんなものではないというのなら分かるなぁ。

ただ、おそらくブラックにも高いレベルのブラックと低レベルのブラックがあって、レベル高いのって今更会社名出す気にならないから出さないけど東大卒の女子社員が自殺して話題になったアレ。そういう世界は私はよく知らんのでパス。私の知ってるブラックは逆のベクトル。

給料安いし、朝礼長いし、仕事量は多い! その上、パワハラモラハラのオンパレード! 最低だよ! だから、他の新人は辞めちゃったんだ。
(p.161)

啖呵を切っているのは柚木くん。ブラックにいそうな典型的なダメ社員。コンビニ人間にも社会的不適合者が出てきたけど、柚木くんは約束は守らないどころかウソをつくし遅刻するしお客様の訪問はバッくれるし社印を偽造する、しかもそれが先のような理由があるから正当だと主張する。最後はもっとスゴいことになるけどネタばれになるから書かない。

リアルでそんな社員っているのですか、と思う人がいるかもしれない。あなたの人生、幸せだったでしょ。まあ、いますよ普通に。ていうか、最後は会社の金持って逃げるとか、そのあたりまではリアルに知ってる。「あいつ金持って逃げたよ」と言われたときは、ふーん、としか言えなかったけど。そういうの、見た目は分からないですよね、逃げるまで。

私はウソが絶対につけない性格なのでウソがつける人というのは尊敬しているのだけど、仕事してないのならしてないと言えばいいのに、したことにしてややこしくなる程度なら、ブラックじゃなくても普通にありそうな気もするなぁ。いつの間にかできてますみたいなウルトラCがあればいいのだけど、大抵は深みにハマりまくってウルトラQのオープニングのようなぐるぐるした世界になってしまう。

まあ気楽にポテチでも食べながら読めばいいんじゃないの、という感じ。ポテチ業界がピンチらしいけど。結論的には、個人的には、不可でもカフカでもないです。

要はる 著
集英社オレンジ文庫
ISBN 978-4-08-680108-9