今日は予告通り、ぬばたまおろち、しらたまおろちシリーズの3作目、「蛇苺の魔女がやってきた」です。
タイトルの「蛇苺の魔女」は、イギリスからやってきた妃早子・ミラーという魔女のことなのですが、ざっくり紹介すると、この魔女が最初から最後までひっかきまわして行方をくらますストーリーです。前作に比べるとスペクタクル、サスペンス感が大幅増量されています。
ロシアから来た小人族、ドモヴォイのミハイルが妃早子のサンドイッチを盗んでバレて怒られている所に、綾乃がドモヴォイだから仕方ないと釈明するところは面白いです。
ドモヴォイなら人のサンドイッチをくすねてもいいってのかい?
(p.92)
これに対して綾乃は、
ドモヴォイだから、言っても人間の理屈は通じない
(p.92)
話が通じないのは仕方ないわけです。どうも最近の日本はドモヴォイが増えているような気がしますね。
今回は、竜が出てきます。ネッシーとかも出てきます。
五郎丸湖に釣りに行った観光客が、首長竜らしきものをボートの上から見かけて写真を撮った。
(p.89)
これがゴッシー、終盤でゴッシーを屈斜路湖まで運ぶシーンがなかなか壮大です。ちなみに五郎丸湖というのは架空の湖ですが、モデルになった湖があるのかどうか分かりませんでした。作品には「わたらせ渓谷」の話が出てくるので、その近くかもしれません。
特に面白かったのはゴッシーをどうするかを交渉する、というか相談、舌戦のシーンです。双方がゴッシーの所有権を主張し、相手が泥棒だと考えているので埒が明きません。そこでゴッシーの意志を尊重しようというのですが、ゴッシーと直接会話ができないので、
アロウが青大将に話し、青大将がヤマカガシに話し、ヤマカガシが蜥蜴に話し、蜥蜴がゴッシーに話しかける
(p.264)
こんなので情報が正しく伝わっているのでしょうか。
前作までに蒔かれた伏線も回収する内容になっていて、そういえばそこが変だったな、と今頃気付くという仕組みになっています。
蛇苺の魔女がやってきた
白鷺あおい 著
創元推理文庫
ISBN: 978-4488588045