Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

プリンセス・トヨトミ

部隊は大阪国。大阪の裏の姿です。トヨトミとか出てくるので時代物かと思いきや、舞台は現代。キャストは戦国時代の末裔です。

中学生の橋場茶子は豊臣家の末裔として残った最後の一人、王女、即ちプリンセス・トヨトミです。しかし茶子は王女であることを知らされていません。だから普通に好き放題やります。ヤクザの事務所に単身殴り込みに行きます。ていうかどう見ても普通じゃない罠。

主人公は茶子の同級生の真田大輔。茶子を守れという至上命令が出ています。その大輔はどんなキャラかというと、

「僕は――ずっと、女の子になりたいと思っていました」
(p.65)

てなわけで中学校にセーラー服で登校して一騒動。この大輔ですが一体何なのだろう、性同一性障害なのか単に女性願望のある女装趣味なのかよく分かりません。個人的には単にセーラー服着たい人間な感じがしないでもない。

ストーリーは会計検査院が大阪にある社団法人OJOに検査に入って大騒ぎになるというもので、ちなみにOJOというのは王女のこと。お嬢ではありません。OJOってローマ字的には王女なのかお嬢なのかわからんな。

大阪国という合法的な裏世界が出てきます。明治維新で新政府が発足するときに、大阪国と新政府は秘密条約を締結したことになっています。この社団法人に流れ込んでくる補助金が正当なものかどうかを調査するのが会計検査院第六局のメンバー、松平、鳥居、ゲーンズブールの三名です。登場人物の名前は歴史的人物に対応しているのでイメージしやすい…いやまて、ゲーンズブールというのが分かりません。

社団法人OJOのあるのは谷町7丁目。この住所は実在します。大阪城からは南西の方角になります。大阪城の地下と通路で繋がっているという設定が出てきます。京都に謎の地下道があるという伝説はありますが、あまり大阪の地下は聞いたことがありません。標高的に地下水とか出そうだし。とはいえ、大阪城からの秘密の抜け道は絶対にありそうな気もします。

終盤でプリンセスが会計検査院に拉致されたと誤解して大阪国の男性全員が立ち上がり大阪城前に集結するシーンは壮大です。騒乱状態になりかけている大群衆の前にセーラー服の大輔が現れて叫ぶシーンがクライマックス。大輔が叫ぶと群衆がシーンと静まり返るシーン。なにが。

最後の最後にもう一つ「ほんまかいな?」的なネタが出てきてオチになるのが大阪的です。何か不自然だなと思っていたのが腑に落ちる的な。

というわけで、今日の一言。

「人は自分と違うことを、なかなか理解せえへん」
(p.228)


プリンセス・トヨトミ
万城目 学 著
文春文庫
ISBN: 978-4167788025