今日の本はヘヴィーオブジェクトの4冊目、「電子数学の財宝」。
このシリーズ、巨大兵器を使って戦争する話なのですが、出てくる集団について。
王政による完全な統治を掲げる『正当王国』。
情報の質と量で善悪を決定する『情報同盟』。
経済的活動が人命をも凌駕する『資本企業』。
信仰心によって社会を制御する『信心組織』。
(p.24)
この4つの集団が対立しているわけです。対立の原因は様々な社会背景が設定されていて、例えば第三章の構図は、オセアニアの食糧事情。
食肉関係のほとんどを『資本企業』からの輸入に頼っている。この金づるを『情報同盟』製の人工牧場に引っかき回されたくなかった
(p.286)
のような理由で戦争になるわけです。もっとも、その背後にあるのは常に利権争い。分かりやすい。
第一章の「青一色の海になるはずだが」は主人公の工作員、ヘイヴィアとクウェンサーが敵地に潜入してコンピュータを止めてくる話。
『「シャーベティ」のデフラグの速度がいきなり減速しました。おかしい、かなり大型のコンピュータをこのタスクだけに使っているはずなのに!!』
(p.89)
シングルプロセッサなんですかね。ラズパイとかで超分散した方が速そうな気もしますが、ていうかデフラグしてるってどんなシステムなんだろ。ちなみに速度低下の原因は、
答えは熱暴走。
(p.95)
加熱して暴走させるという古典的な攻撃なのでした。
第二章「白い砂浜のクリスマス」では女上官のフローレイティアさんを酔わせて潰すという作戦に成功しますが、裏目【多分】に出ます。敵への攻撃としては、
オブジェクトではなくて、その周りの環境を破壊することで運用を止める
(p157)
相手を止めるにはいろんな対応方法があります。相手そのものを破壊するだけでなく、操縦者を叩く、メンテナンス要員を叩く、エネルギーを枯渇させる、等々。
ヘイヴィアが考えた今回の環境破壊は、相手が撃ってきた誘導式ミサイルを予定通りに飛ばせないようにするために、地形を大幅に破壊して、ミサイルに誤認識させるというものでした。目的地の座標戦場では GPS が使えないという大前提があるようです。まあ当然でしょうけど。
第三章「真っ赤に染まる海の宝」では、相手オブジェクトが性能的に圧倒的優位なので、下克上としてどう立ち向かうかというのがポイント。相手はレーザービームをがんがん撃ってきます。それを何とかしないと勝ち目はない。
その感覚が次第に短くなっています!
(p.217)
これは誤植なのでは。最新の刷では直っているかも。
ヘヴィーオブジェクト 電子数学の財宝
鎌池 和馬 著
凪良 イラスト
電撃文庫
ISBN: 978-4048705493