Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

キノの旅XVI the Beautiful World

今日は「キノの旅」の第16巻です。

第一話「死人達の国」は、ゾンビを殲滅する話なのですが、突入した精鋭4人の中の兵士がおかしくなってしまうというのが微妙にホラーです。ま、それはそうとして、エルメスの想像した真相の中で気になったのは、

満ち足りた精神世界で、飢えることも老いることもなく、天国にいるような感動を味わえる。
(p.67)

という状況に対して、それでどうなるかというと、

世界中の人間は、本当に幸せな生物に進化を遂げる。
(p.68)

と考えているのですが、ちょっと違和感がありますね。それでいいのかな。飢えるとか老いるというのは確かに面白いことではないと思いますが、それが続いてしまうと感動は消えてしまうのではないか。

第二話~第四話あたりの前半は割とヒドい話【謎】が多いのですが、後半のエピローグ「恋文の国・a」からフォトの日々「見えない真実」と、「残されたもの」は急にシリアス系、悲しい話です。

キノが出てくる話は人間がどんどん死体になるのに何も悲しくないのに対して、フォトの話は、フォトがただ正直に行動しているだけで周囲の人が悲しい目にあってしまうのが不思議です。

悲しい記憶でも、残さなければならないんです!
(p.234)

写真家としては素晴らしい志ですと。しかし、被写体を選択しすぎると、正しい姿が残せなくなることもあります。


キノの旅XVI the Beautiful World
時雨沢 恵一 著
黒星 紅白 イラスト
電撃文庫
ISBN: 978-4048869805