Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

キノの旅XV the Beautiful World

今日は「キノの旅」、第15巻です。順不同(笑)

この巻は個人的に気に入った話が多いです。といいつつ、いきなり第四話「フォトの日々」。フォトの話です。前回出て来たときは行商人が毒草で全滅して写真家になった話でしたが、今回は写真家になった顛末が細かく描かれています。前回のあらすじも出てくるので、この回だけでいろいろ分かるようになっています。

モトラドのソウは世渡りがかなり上手な感じなのですが、フォトが純真というか、

真面目に人を信じ、人を疑わず、人を騙さず、人を傷つけず、全ての隣人を愛していれば、素敵な人生になると信じていたのだ。
(p.140)

てな感じで、バカ正直で誰でも信用してしまうので、対比が面白いです。これに対してキノの場合は、

「その場にいない人を悪く言うほど、簡単なことはないねぇ」
「まったくだ、誰にだってできる」
(p.179)

こんな感じです。師匠に仕込まれた成果なのです。しかし、多分フォトにはできません。脳内に禁止ロジックが組み込まれているのです。

第六話「犯人のいる国」では、キノは白煙の中、視界ゼロの状況で戦います。

「戦い方を教えてくれた人が、よく練習させてくれたんだよ。灯りのない室内とか、真っ暗闇で戦う方法、見えないのを無理に見ようとせずに、目をつぶってしまうやり方」
(p.244)

隆慶一郎さんの「影武者徳川家康」だったと思いますが、柳生兵庫介が夜、目を閉じた状態で待ち伏せするシーンがあります。相手が攻めてくるところで目を閉じるのは、なかなかできることではないそうです。

関係ありませんが、私は深夜に家の中を移動するとき、大抵、灯りを点けません。真っ暗なまま移動する練習です。階段の所で事件が起きることもあります。

エピローグの「戦って死ぬということ・a」ですが、最後に男が絶叫するシーン。昔のことを覚えているかと問われて覚えていないことに気付いて叫ぶのですが、絶叫する必要はあったのでしょうか。私なら覚えてなくても「はてな?」と首を傾げるだけのような気がします。


キノの旅XV the Beautiful World
時雨沢 恵一 著
黒星 紅白 イラスト
電撃文庫
ISBN: 978-4048709620