Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

キノの旅VII the Beautiful World

今日は「キノの旅」の7巻です。

第一話「迷惑な国」は、国がまるごと移動する話。ひょっこりひょうたん島なら海上なので割といい感じかもしれませんが、この国は陸上を移動するのでマジ迷惑です。

人が歩けば足跡は残ります。これだけは仕方がないと割り切り、またこの土の上に新しい緑が逞しく育ってくれることを願っています
(p.52)

種をまく程度はしてもいいと思うわけです。

どんな人間でも、どんな国でも、ある程度他人や他国に迷惑をかけながら存在しているのですよ
(p.53)

まあそうですが、その場合は当然、相手からも迷惑をかけられることを許容することになります。それに、普通は迷惑だけでなく、親切とか余計なお世話という行為も行うべきものです。

第二話「ある愛の国」。これは…何といっていいかよく分からない話ですが、

本人達がいいって言えば、たぶん何でもいいのでしょう
(p.69)

それが本心からのものであれば。ちなみにこのストーリーの批判的視線は、羊の気持ちが一切考慮されていない所に向くはずです。

第四話「冬の話」。ある種の宗教への批判でしょうか。教義が独特です。

けがも病気も、一切他人は手を出さない。自分だけで治す。
(p.94)

治療行為は悪なのです。もちろん安楽死もダメなのですが、

戦争に備えた教義として、異教徒に殺された者は、問答無用で天国に行けることになっていた。
(p.94)

キノは異教徒として死にたい人を安楽死させてやる、という仕事をします。報酬は希望者の家族が支払います。異教徒の旅人が殺人を犯すと国外退去処分になりますが、再入国は禁止しないというザル法です。とりあえず、うまく回る系のルールです。

ここにやってきたのが他の国で安楽死をやって殺人犯となり、国外追放された医師のディス。

患者がどんな状態でも、いくら本人が望んでも、安楽死は医師による殺人である〟
(p.104)

ディスはこの国で治療行為をやろうとします。その罰則もユニークなのですが、それは読者へのお楽しみということで。ただ、個人的にはこういうオチはどうかと思います。宗教的に。

エピローグの「何かをするために・a」

「この国で、〝正当防衛〟は罪にはならないよ。そして〝自殺の幇助〟は、それほど軽い罪ではない。」
(p.221)

私はこの話は本で読む前にアニメで観たのですが(キノの旅 何かをするために - Life goes on -)、その時点では老人が自殺するためにキノを使ったということが分かりませんでした。


キノの旅VII the Beautiful World
時雨沢 恵一 著
黒星 紅白 イラスト
電撃文庫
ISBN: 978-4048666299