Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

天涯の砦

今日は小川一水さんの「天涯の砦」。

望天という宇宙ステーションで大事故が発生。第四扇区(セクター)が吹き飛ばされてしまいます。その中には数名の生存者が。そして、爆発のショックで加速された第四扇区は、このままでは大気圏に突入して燃え尽きるという事実が発覚します。

運がよければ外板で熱が遮られて、俺たちは形を保ったまま墜落できると思う。運が悪ければ燃え尽きてガスになる。
(p.64)

この危機をどうやって乗り越えるか。というのはまだ序の口。一つ危機を乗り越えたらそれは新たなる戦いの始まりに過ぎない…的なトラブルがどんどん発生するわけです。サスペンス系のストーリーですね。サスペンスフィクションでSF。

個人的に気になるキャラはキトゥン。大金持ちの令嬢ですが、とんでもない育ち方をして常識的なことが全く分かっていません。

有人とは金で買うものではないということを、キトゥンはその後もずっと知らなかった。
(p.131)

この破綻したキャラクターが、読み進んでいくうちに、結局は一番人間らしい行動を取っているように見えてくるのが不思議です。

ストーリーは謎解き、ビックリ、そう来たか…的な要素が満載なので、あえて紹介しません。いくつか面白いと思った表現だけ紹介します。

ただの賢い子供より、賢くて裕福な子供のほうが、より多くの選択肢に恵まれる
(p.99)

リアルに金持ちの方が高学歴になる、という調査結果は実在するようですが、「選択肢に恵まれる」という表現が秀逸です。

考えるのは悪くない。黙っているよりはましだ。
(p.108)

黙って考えるという選択肢もあると思います。

真空も怖いが、生きた人間はもっと恐ろしい。
(p.164)

ちなみに私は自分が一番怖いです。何をやらかすか予想ができない。


天涯の砦
小川 一水 著
ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション
ISBN: 978-4152087539

ハヤカワ文庫JA
ISBN: 978-4150309459