今日は小川一水さんの「妙なる技の乙女たち」。超長編を読んだ後に、このような短編集を読むと何かリラックスできて楽しいです。
SFで、7つの短編が入っています。技に応じた職業は、順に、宇宙服のデザイナー、水上タクシーの運転手、不動産売買、保育士、軌道エレベーターのアテンダント、アーマート(彫刻家)、宇宙農業の開拓者、みたいな感じです。
個人的にお気に入りなのは第二話の「港のタクシー艇長(スキッパー)」。スキッパーの水央が将軍を乗せて大変な航路を進みます。将軍は水央の後見人なのですが、やや苦手なようです。最後に海に飛び込むシーンが感動的です。
第五話の「Lift me to the Moon」から、人はなぜ宇宙に行くのかという問いに対して。
「自分がはっきりするから、だと思います」
(p.212)
そういえば「私はカモメ」と言った宇宙飛行士がいました。先の引用は麦穂のセリフなのですが、話の流れからいって、正解とはいえない微妙な意見のようです。では何が正解かというのは、多分「分からない」でしょう。
第七話の「the Lifestyles Of Human-beings At Space」では、軌道観測所の保存食を食べてみたらマズい、というところから始まって、
「で、どうすればうまいものが食えると思う? オイスターソースも、中華鍋も、採れたてのアスパラガスもない、地球から四十万キロ離れた観測所で」
(p.269)
これに対する私が想像した解答と、このストーリーに出てくる人達のソリューションは違いました。私のアイデアの方がSFっぽいような気がします。どんなのかというと、味覚を変えてしまうのです。ストーリーでは、宇宙に農民がいないのが問題だとして、宇宙農業を開発することになります。
一つ気になったのは、
水耕栽培は制御性が高い。人間ないし機械が管理するという前提なら有用だ。しかしカビが生えやすいという欠点があるし、
(p.289)
宇宙にもカビ菌がいるのですかね? 例えば国際宇宙ステーションにはカビは生えているのでしょうか。電導ヅタとか。
妙なる技の乙女たち
小川 一水 著
ポプラ社
ISBN: 978-4591101841