Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

戦争は女の顔をしていない

今日の本はノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチさんの「戦争は女の顔をしていない」。

戦争に行った女性の話を集めた本。本人のインタビューを元にした話がたくさん出てくる。といいつついきなり男性の話の紹介になるが、ある少佐の言葉。

『俺は祖国は守りたい。だが、あの革命の裏切り者……スターリンを守る気はしない』
(p.17)

このような言葉が当局にバレたらどういうことになるのか。おそらく想像以上に怖いことになるだろう。そのようなリアルさがある。

私は戦争体験がないのでよく分からないが、

戦争に行ったことのある人たちが言うには、一般市民は三日間で軍人感覚に変わるとか。
(p.22)

個人的には本物の軍人と話をしたことすらないから、その軍人感覚というのが全く分からないのだ。私の持っている軍人感覚というのは、小説とか、アニメとかに出てくるソレなのである。全く軍人らしくない軍人だ。

俺たちのところには若い女性が三人いた。その子たちはまだどうにかなる者一人一人のところに夜になると通ってきた。
(p.25)

そのような話はマンガで読んだことはあるが、もちろん事実として存在しているのである。

「検閲官との会話より」に出てくるこの話。

真実というのは我々が憧れているものだ。こうでありたいと願うものなのだ
(p.29)

世界のどこでも、歴史というのはそうなのだろう。ただ日本という異質な国を除いては。日本の歴史家は願望や理想より事実であることを優先する。

歩兵中隊(衛生指導員)の話。

私は、どうしても前線に出て自分の血を分けた人の復讐をしたかった。
(p.214)

日本だと、罪を憎んで人を憎まず、という。現実ではそれはとても難しい。身内を殺した相手が近くにいたら、あなたはどういう行動を取るだろうか。

オリガ・ワシーリエヴナの話。

ドイツ軍は撤退して行くとき味方の負傷兵を撃ち殺して行ったの。ドイツ軍はどうせ私たちに撃ち殺されるだろうと思ったのね。自分たちがソ連軍の負傷者にたいしてやったと同じことをするだろうって。
(p.239)

負傷兵が残っていたら虐殺されると考えたのだ。この話では、ソ連軍はドイツ軍の負傷兵を治療したことになっている。ただし、喜んでやっていたわけではなさそうで、反対する人もいたらしい。

曹長(砲兵中隊衛生指導員)の言葉。

共同埋葬地を見つけると、私は跪きます。そういうお墓を見るたびに……必ず跪きました……
(p.299)

そのような人が靖国神社に来たら、やはり跪くだろうか。

最後に、少尉(地雷除去工兵小隊体調)の言葉。これは軍学校の試験問題だという。

「地雷除去の工兵は人生で何回間違えることがあるか?」
「工兵はただ一回間違えるだけです」

二度目はないということ。


戦争は女の顔をしていない
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 著
三浦 みどり 翻訳
岩波現代文庫
ISBN: 978-4006032951