Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

生き地獄天国―雨宮処凛自伝

今日の本は「生き地獄天国」。著者の雨宮処凛さんの自伝、ということはノンフィクションです。

表紙には、大雑把な履歴が書いてあります。

激しいイジメ体験→ビジュアル系バンド追っかけ→自殺未遂→新右翼団体加入→愛国パンクバンド結成→北朝鮮イラクへ→右翼をやめるまで
(表紙)

文庫本が出るときに、単行本から7年経っていて、加筆されています。

私はこの本を読んでひきこもりから脱出したという若者を何人か知っている
(p.311)

だそうです。ひきこもりの人は、一読してみるといいかもしれません。こんなに無茶苦茶でも生きていけるのだから自分も出来るのではないか、とか考えるのでしょうか。とはいえ、とても真似は出来そうもない人生です。

この本にはオウム信者も出てくるのですが、雨宮さんはオウムの考え方に共感できるところがあるといいます。

別に物質的にはホント、私たちって何ひとつ不自由していないじゃないですか。でも、いろんなこと、なんか本質的なこと、例えば自分が生きる意味みたいなものには、ものすごく不自由するんです。
(p.126)

確かにネットを見ていると、夢がないとか、何をしていいか分からないとか、そういう若者が大勢いることは分かります。私の感覚だと、何をしていいか分からないのに生きていられるというのが分からないのですが。

この本を読んで思ったのは、雨宮さんがとても騙されやすい性格なのではないか、ということです。

日本に帰って、こんな話をヒデ君と土屋さんにすると、二人とも、私の洗脳されやすさに呆れ果てていた。
(p.176)

説得されるとすぐに納得して共感してしまう、というのは共感力が強いのかもしれません。特殊能力のような気もしてきます。でもそこに特別なポリシーがあるのかというと、

私にとっては、右翼も左翼も死体写真集も、同列のサブカルチャーだったのだ。
(p.280)

とか言い出すし、すぐに染まる割に完全に染まるわけでもない、不思議な人なのです。そして何が不思議かというと、この本がノンフィクション、リアルだということなのです。


生き地獄天国―雨宮処凛自伝
雨宮 処凛 著
ちくま文庫
ISBN: 978-4480423979