Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

アリスマ王の愛した魔物 (2)

今日は昨日紹介した小川一水さんの「アリスマ王の愛した魔物」から、残りの2作品を紹介します。

まず、「星のみなとのオペレーター」。これは完全にSFです。宇宙の彼方からウニが攻めてくる話です。

十兆個のウニが太陽のそばを通過する
(p.178)

日本の防衛も、核兵器をミサイルみたいなのを装備して迎撃するより、ドローンを100億個程度用意しておいて、敵が攻めてきたらドローンでバリアを作って防御した方が確実のような気がしますね。つまり、数に頼るわけです。

この話のヒロインはすみれ。イダという小惑星で管制のオペレーターです。

「ハロー、こちらはコントロール。ようこそ小惑星イダへ。歓迎します――」
(p.153)

このアナウンスがその後トンデモナイ事態にすみれを巻き込む原因になるのです。そこの流れは結構笑えます。

最後の作品は「リグ・ライト――機械が愛する権利について」。作品名の通りで、AIの話です。

あなたが踏切で列車に轢かれないように通せんぼする遮断機のことを、あなたを愛する存在だと思いますか?
(p.283)

電車が来る時に作動するのならAIではなく単なる機械のような気がしますが、人間が来た時だけセンサーが認識して遮断するとか、さらに、気に入らない人のときは遮断しないとか、そこまで機能向上したらどうでしょう。

この話のクライマックスは、車に搭載されたAIが故意に事故を起こすところです。AI搭載車が事故ったときの責任問題に、AIの人権まで含めて考察するというのは興味深い視点です。


アリスマ王の愛した魔物
小川 一水 著
ハヤカワ文庫JA
ISBN: 978-4150313098