Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

西の魔女が死んだ

今日は有名な作品で「西の魔女が死んだ」。Amazon の本のジャンル、売れ筋ランキングで 375位。学校の課題図書になったりいた記憶がありますが、分かりやすく書かれているのに難しい要素が満載の奥の深い作品です。いろんな「いいこと」が出てくるので、見逃さないように注意深く読む必要があります。

人に見せたくないものがたくさんあるという話があって、

人は大人になろうとするとき、そういうものがどんどん増えていくんです。
(p.32)

確かに、とか思いましたか。しかし私はそういうのがあまりないような気がします。むしろ子供時代の方が見られたくないものがたくさんあって、ある時期からどうでもいい感じになってしまったようです。見せない方がいいものはあるのですが、見せたくないかというと、別に構わない、という感覚なのです。

また、これはおばあちゃんのおじいさんの話、明治の始まりの頃のエピソードに出てくる話題ですが。

日本人の礼儀正しさや優しさ、毅然としたところ、正直さに大変感銘を受けて英国に帰りました。
(p.34)

よく言われている日本人のイメージなのかもしれませんが、本当なのでしょうか。落とした財布が戻って来るのが日本というイメージはあるかもしれません。それは礼儀正しいとか、正直とか、そういう印象なのでしょうか。馬鹿が付いたりしていないでしょうか。

幸福論についてもちゃんとツボを押さえています。

何が幸せかっていうことは、その人によって違いますから。
(p.58)

金持ちになれたら幸せとか、一流大学に合格したら勝ち組とか、ネットをみているとそんなのばかりに思えてきます。特に最近の若い人たちが「マウント」とか「見下す」のは当たり前だという感覚で話をしているのが気になります。昔はそんなことはなかったと思うのです。見下すためにいい大学に行く、なんて全く記憶にないです。時代が変わったのでしょうか。

生死感についても難しい話がサラっと出てきます。

「じゃあ、魔女って生きているうちから死ぬ練習をしているようなもの?」
「そうですね。十分に生きるために、死ぬ練習をしているわけですね」
(p.118)

死ぬ練習というのは面白い発想です。年を取ると自然にありそうな気もします。しかし多くの人は練習する前にぶっつけ本番で死んでしまうのでしょう。


西の魔女が死んだ
梨木 香歩 著
新潮文庫
ISBN: 978-4101253329