Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

大学はもう死んでいる? トップユニバーシティーからの問題提起

今日は「大学はもう死んでいる?」。大学の在り方を、苅谷剛彦さんと吉見俊哉さんの対談形式で議論していく形式になっている。

「大学はもう死んでいる?」という本書のタイトルは、疑問形で語られる。もう死んでいるのか、まだ死んでいないのか、答えは確定していない。
(p.10)

もしかすると「大学は既に死んでいる?」というタイトルにしたかったのではないか。秘孔を突かれた、あたたた的な。

内容は Amazon のレビューでも指摘されているが、トップユニバーシティーというのがポイント。日本の大部分の大学は、トップユニバーシティーではなく、就職予備校、小中高の復習のためのスクールになっている。そこに要求されるものと、トップに要求するものは違う。例えば日本の大学に特徴的なものとして、新卒採用というシステムがある。大卒のタイミングで採用する仕組みなのだが、このときに企業が要求するのは何かというと、

学生に求められていたのは、学習能力があるかどうか、先輩・後輩関係の中で従順になれるかどうか、礼儀や挨拶がちゃんとできるか、忍耐力があるかということで、大学で学んだ専門的知識ではないわけです。
(p.28)

そもそも大学院まで行くのならともかく、学士となる4年間で得られる程度の知識は期待していないという声もある。特に、文系の場合、大学で学んだことが仕事の何に役立つのか。吉見さんは、

人類にとって中長期的に何が役に立つかということなら、どう考えても、文系ほど役に立つものはありません。
(p.23)

と言うが、それはあくまでトップユニバーシティーとして社会を牽引していく場合に言えることであって、就職予備校としての大学の役目ではないだろう。

この本は面白いので、何回かに分けて感想を書いていく予定で、今回はここで一旦切る。

(つづく)


大学はもう死んでいる? トップユニバーシティーからの問題提起
集英社新書
苅谷 剛彦 著
吉見 俊哉 著
ISBN: 978-4087211061