Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

菜根譚 (7)

今日は菜根譚から、「恩恵の真実の価値」。

千金難結一時之歓、一飯竟致終身之感。 蓋愛重反為仇、薄極翻成喜也。
(p.155)

特定の人に30万円給付よりも、全員10万円給付の方が有難い、というような話とはちょっと違うのだが、多ければいいというものではない、というのはいつの世でもいえるようだ。とはいえ、他の条件が全部同じなら、金額が多い方が有難いような気がしないでもない。すぐに100万円貰えるのならすぐに10万円貰えるよりもいい。

莫大な金銭でも、その場かぎりの喜びさえ得られないことがあり、わずか一杯の食事でも結局一生の感謝の念を抱かせることもある。
(p.155)

「一飯竟致終身之感」というのは、一飯千金という故事によるという。困っている時には僅かなものでも有難い。轍鮒之急という諺もある。タイミングを逃すと何の意味もなくなってしまう。

余談だが、一宿一飯という言葉がある。この言葉は今では、宿や食事の恩になったら忘れてはならない、という文脈で使われるものだが、本来は渡世人の使った言葉で、恩義のある相手でも、一宿一飯を世話したら追い出しても構わない、というような意味だという説がある。視点によって意味がまるで違ってくるのだ。


菜根譚
講談社学術文庫
中村 璋八 翻訳
石川 力山 翻訳
ISBN: 978-4061587427