Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

リア王

今日あたりはエドガー・アラン・ポーの「赤死病の仮面」でも読みたい気分ですが、選んだのは全然違って、シェイクスピアの「リア王」です。

有名な作品なので紹介するまでもないかもしれませんが、要約すると、リア王と娘達が死ぬ話です。シェイクスピアの作品からは数々の名言が後世に使いまわされていますが、なかなか深い言葉が満載であるのは戯曲から出てくる性質なのでしょうか。印象的なセリフがないと観客は飽きてしまいますからね。

如何に賤しい乞食でも、その取るに足らぬ持物の中に、何か余計なものを持っている。
(p.86)

これはリア王の言葉ですが、どんなモノにもゆとりがないといけない、という摂理を言っているわけです。余計なものがあるから、本質的なものが引き立つのですね。あるいは、余計なものがないと、必要だということが分からない。

次はグロスターの言葉です。グロスターは争いに巻き込まれて、目を潰されてしまうのですが、

俺は目が見えた時には、よく躓いたものだ。例はいくらでもあろう、人間、有るものに頼れば隙が生じる、失えば、卻ってそれが強みになるものなのだ。
(p.122)

有るという前提でいると、それが無い時にどうしていいか分からなくなります。私は夜に家の階段を、電灯を点けずに降りることにしています。停電の時に降りる練習なのです。これで一度、階段を踏み外したことがあります。本末転倒です。

もう一言、リア王の言葉を紹介しておきましょう。

犬でも職権を与えられれば、人はこれに従う。
(p.145)

職権というのはそういうものですからね。

 

リア王
ウィリアム シェイクスピア
William Shakespeare 原著
福田 恆存 翻訳
新潮文庫
ISBN: 978-4102020050