Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

散歩するネコ れんげ荘物語

今日はれんげ荘シリーズの第四弾、「散歩するネコ」です。今回は文庫本ではなく単行本。

前回倒れたキョウコの母は記憶喪失になっています。ただ、キョウコとしては、ケンカせずに済むので、それがかえって都合がいいようです。キョウコの母の性格を、キョウコは、

彼女には他人の役に立つとか、そういった考えはみじんもなく、すべて自分中心でしか物事を考えられない。
(p.44)

てな感じで考えています。そういうのは子供に伝染しそうなものですが、どこでおかしくなったのか、いまいちわかりません。働く気がまるでないというのを除くと、キョウコはかなりありふれた人間なんですけどね。今、森茉莉さんの「贅沢貧乏」を読んでいるのですが、これもスゴイ本なので、そのあたりから何かヒントがあったのかもしれませんが。

今回の本のタイトルですが、ある日散歩に出かけると、小型犬を連れて散歩している人がいたので近付いてみると、

そのリードをつけて地べたをゆうゆうと歩いてきたのはネコだった。
(p.48)

このネコがぶっちゃん、キョウコの部屋にたまに遊びに来ていたネコなのです。というわけで「散歩するネコ」というタイトルになるのです。散歩させていたのはネコの飼い主で、部屋飼いにしているのに逃げ出して、キョウコの部屋には来ていたのです。

今作は、クマガイさんのお言葉が光っています。例えば。

「誰も明日はわからないのよ。だから享楽的という意味ではなく、なるべく自分が楽しく過ごせるように過ごしましょうということよね」
(p.65)

刹那主義でもないし、なにか大悟したような感じがしますね。

生きているうちは、心が痛むけどいわなくちゃいけないことが何度かあるのよ。
(p.130)

これもクマガイさんのお言葉です。人生経験者的な重みがあります。

キョウコさんは今回、コナツさんに振り回されるのですが、キョウコさんが身に付けている処世術として、テキトーに受け流すという技があります。どんなのかというと、

相手の言葉をいつも真正面からとらえずに、腹の中で、
(あー、はいはい、またはじまった)
と受け流すとか、
(p.86)

一流企業の戦士には必要なスキルですね。チユキさんもなかなか深いことを言います。

やっぱり歳を取らないとわからないことってあるんですね
(p.112)

歳を取っても分からないこともありますけどね。


散歩するネコ れんげ荘物語
群ようこ
角川春樹事務所
ISBN: 978-4758413312