Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

猫探偵ジャック&クレオ

今日はミステリーで「猫探偵ジャック&クレオ」。ジャックとクレオは飼い猫の名前ですが、探偵といっても何か推理するわけではないです。猫には猫のできることがある的なストーリーですかね。殺人事件が発生します。ミステリーかというと、それほど謎解きでもなく、ハードボイルドかというと微妙な殴り具合です。

登場人物は貧乏シングルマザーのケイトと息子のジェレミー。遠い親戚の遺産として豪邸と株を相続することになります。ただし、相続する権利があるのがもう一人、ジェイクという元警官の男。相性は微妙な相手です。相続の条件は、

「相続するためには、その屋敷に住まなくてはなりません。家を出たら、権利を失います。それから、地所は売ることができません。第二に、老婦人はペットを愛していました。ペットの世話をすることに同意していただかなくてはなりません」
(p.50)

ということは相続のためには同居する必要があるわけですが、ケイトは貧乏を抜け出す誘惑に妥協して同居生活を始めることになります。このケイトの性格が、

彼女は折り紙つきの何でもためこむ人間で、意味がありそうなものはひとつも捨てることができなかった。
(p.72)

最近、何でもため込むって実は何も持ってないのと同じではないかと、少し思い始めてきたのですが、とにかくケイトは部屋をちらかし放題にします。汚部屋系。ところがジェイクは整理整頓が好きで料理も上手という意外なキャラ。手は早いんですけどね。

ジェレミーは転校して、近所のデレクと友達になります。これが金持ちのお坊ちゃんで勉強ができない。数学ができない。でもそんなの必要ないというのですが、会社を経営するときに必要になったらガリ勉を雇うから大丈夫という論理です。数学ができないと、そいつが数字をゴマカしても分からないぞというと、

じゃあ、彼を監視する別のガリ勉を雇うよ。
(p.158)

結託されそうな気もしますけどね。でもアイデアは悪くないかも。

たいての人間はごまかしをするし、それについて嘘をつくんだ。
(p.162)

そのことは理解しているのです。ちなみにこのデレクが殺され役なんですね。ジェレミーは殺人の容疑者として疑われますが、メンタルが弱いのでかなり悩むことになります。メンタルが強いのはジェイク。

起きてもいないことを心配するのにあまり時間を費やすと、起きていることの面倒を見る時間がなくなる。
(p.248)

ジェイクの伯父が言っていた言葉だそうです。コトが起きてから考えた方が手間が省けるというのはいいノウハウですな。

ホープ先生はジェレミーの学校の女先生。白いブラウスに薄い緑のショートパンツで現れますが、この先生も先生だけに、なかなかいいことを言います。

望みのもののためには、危険を冒さなくちゃいけないわね
(p.384)

ハイリスクノーリターンというのも世間にはわんさかありますけどね。いわゆる罠ですが。

このストーリーで個人的に気になったのは脇役の女の子リアノンと、そのお爺さんのモーガン。ハイジとアルムおんじみたいな感じ。でもモーガンはショットガンをぶっ放すから危険です。少女と老人だと自分で身を守らないと危ない、それがアメリカ。

わたしたちの中にはいいことも、悪いことも存在する。きみはただ、彼女がきみのためにしてくれたいいことだけを覚えていて、あとは神の御心に任せるんだな
(p.459)

モーガン老人の言葉。全体的にキリスト教の背景色がプンプンしていますが、それにしては悪い奴がどんどん出てくるのが面白いです。動物もたくさん出てきます。


猫探偵ジャック&クレオ
ギルバート・モリス 著
羽田 詩津子 著
ハヤカワ・ミステリ文庫
ISBN: 978-4151783012