Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

学問の発見 数学者が語る「考えること・学ぶこと」

今日はブルーバックスから、数学者の広中平祐の「学問の発見 数学者が語る「考えること・学ぶこと」」です。

ブルーバックスなので数学ネタかと思いきや、人生論的な話が満載で、いろいろ考えさせらる本です。例えば、

人間は親を選択することはできないが、友を選ぶ自由は認められている。
(p.46)

だからいい友達を選べ、という話なのですが、数学とは関係ないですよね。

あるいは、何で勉強するのかという問いに対して、

 私は、学生からこうたずねられると、「それは知恵を身につけるためではないか」と答えることにしているのだ。つまり、学ぶことの中には知恵という、目には見えないが生きていく上に非常に大切なものがつくられていくと思うのである。
(p.53)

だそうです。知恵という表現がいいですね。私は「考え方を高めるため」という言い方をよくします。機械学習が進んで判断ができるようになるイメージです。勉強することで、知識だけでなく思考回路が最適化されるのです。

この話は禅的です。広中さんが家庭教師で小学生に教えていたとき、なかなか覚えないので、なぜ覚えられないのだと怒ったら、

「ぼく、アホやし」
(p.110)

と言われたという話。逆に教えられたのが、

どうせ私はアホなのだから、できなくて当然、できたら儲けものといった気持ちになるのである。
(pp.110-111)

人間って、つい自分は何でもできるとか、そこまで慢心しなくても、頑張ればできるかもとか思いがちなのですが、実際は大抵のことはうまく出来なかったりするのです。その時に「どうせ」という考え方が案外役立つのです。

数学の話も、もちろん出てきますが、意表を突いたものが多いです。例えばこれは有名な数学者、岡潔先生のお言葉だというのですが、

「数学上の問題を解くには、方程式を書いてコツコツやってもはじまらない。仏の境地に達すれば、何だってスラスラ解けるものだ」
(p.136)

マジですか。やはりどの世界でも達人はスゴいのですね。


学問の発見 数学者が語る「考えること・学ぶこと」
広中平祐
ブルーバックス
ISBN: 978-4065124970