Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

星の王子さま

今日の本は「星の王子さま」。ストーリーは説明不要でしょう。紹介するのは、ちくま文庫の、石井洋二郎さんの訳です。

いろんな人が訳していますが、タイトルが「小さな王子」となっている本もあります。これはオリジナルのタイトルが La Petit Prince だからです。星の王子さまというタイトルのキャッチーさは秀逸ですね。

この作品の魅力は、いろんなヒントが得られそうな王子様の言葉と、不条理に満ちた現代社会批判です。

不思議なことがあまり不思議すぎると、さからう気にもなれないものです。
(p.16)

といった考えさせられる言葉がいくらでも出てきます。

何千何百万という星のなかで、ひとつしか咲いていない花をだれかが好きになったとしたら、それだけで、その人は星を見つめてしあわせな気持になれるんだよ。
(p.44)

永野のりこさんの「電波オデッセイ」にそれっぽいセリフがありますね。

登場人物(?)は、王子様の他に、花、わたし、蛇、きつね、その他に王様とか酒飲みとか意外といろいろ出てきますが、蛇は聖書にも出てくる象徴的な動物で、何かそこにも意味があるような気がします。王子様が最初に欲しがるのは羊の絵です。羊も聖書に出てくる重要な動物です。そのあたりの先入観がないと正しく解釈できないような気がします。

心で見ないと、なにも見えない。いちばん大事なことは、目には見えない。
(p.119)

認識論のような世界に入り込んできているような話です。見ようとしないと見えないというのは、イルカさんの歌にも出てきます。

おじさんの星の人間たちって、ひとつの庭に五千本もバラを育ててるんだね……それなのに、自分のさがしているものが見つからないんだ……
(p.133)

王子様は、探し方が悪いと言っているのです。気付かずに見逃してしまうことは、普段の生活ではよくあることです。気付かないのと「無い」のは当事者としては同じなのですが、本当はそこに何かあったのです。

 

星の王子さま
アントワーヌ・ド サン=テグジュペリ
Antoine de Saint‐Exup´ery 原著
石井 洋二郎 翻訳
ちくま文庫
ISBN: 978-4480421609