Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

平太の初恋-はぐれ長屋の用心棒(44)

今日は長屋シリーズから「平太の初恋」。あといくつ寝ると…じゃなくて、あと何作残っていますかね。この作品は第44作で、今回のパターンは少女誘拐物です。

狙われているのは、大増屋という瀬戸物屋の娘、おきよ。孫六が酒を呑んでいると、

店の外の通りで、キャッ、という女の悲鳴が聞こえ、つづいて「静かにしねえか」と男のどすの利いた声がした。
(p.9)

人攫いですね。孫六と平太は機転を利かせておきよを助けますが、相手がしつこい。そこで大増屋の旦那が源九郎達に仕事を依頼します。

些少ですが、二百両用意いたしました。
(p.49)

どこが些少やねん。とにかく、大金をもらって請け負ったので長屋の用心棒達は本気で仕事にかかるのですが、調べてみると他にも行方不明になった少女がいることがわかります。おきよの歳が12歳とかいうことで、犯人はロリコンか。いつものパターンで一味のメンバーを1人ずつ捕まえて情報をgetしますが、例によって敵は口封じにやってきて捕らえられた仲間を殺して去っていく。殺されたらまた一味を捕まえて吐かせる。

やい、権八、てめえたちは、大増屋のおきよも狙っているようだが、おきよはまだ十二だぞ。
(p.136)

このあたりの感覚はよく分からないのですが、昔は武家とか、かなりの子供の頃に嫁入りさせたりした例もあったような。それは話が違うのか。「赤とんぼ」で嫁に行ったねえやは十五ですよね。もちろん十二と十五ではかなり違いますが。

さて、今回ラスボスは浦上。必殺技は、

「今日は、おれの十文字斬りをみせてやる」
(p.148)

そのうちイナズマスパイクみたいなのが出てくるのかもしれない。あるいは北斗百裂拳的な?

「おれの十文字斬りをかわした者はいない」
(p.150)

何か笑ってしまうのですが。ちなみに書き順は横、縦の順のようです。源九郎は三度目の勝負でこの浦上を倒すのですが、浦上も馬鹿正直に同じ技で戦わなくても何か裏をかいて攻めればよさそうなものを。例えばX攻撃とか。

さて、タイトルの平太の初恋ですが、平太はおきよが気になってしょうがないんですね。しかし、事件が解決すると、おきよが急によそよそしくなる。おきよは瀬戸物屋の一人娘で、

長屋住まいで、御用聞きの下っ引きをしている平太を婿に迎えるわけにはいかないのだろう
(p.269)

禁じられた恋なんですね。そもそもおきよの方は、別に何も思っていないのかも。源九郎は、そのうち酔いも覚めるだろうみたいなことを思っていますが、どうですかね、これは結構後の話の伏線みたいな気もします。

さて、今回の江戸の町ですが、

源九郎、菅井、孫六、茂次の四人が、花川戸町に行くことになった。
(p.100)

花川戸町というのは、今の台東区花川戸あたり。浅草寺の近くです。このあたり、源九郎達の勝手知ったるエリアなのかもしれません。


平太の初恋-はぐれ長屋の用心棒(44)
双葉文庫
鳥羽 亮 著
ISBN: 978-4575669251