Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

少女が知ってはいけないこと

今日の本は片木智年さんの「少女が知ってはいけないこと」。思わせぶりなタイトルですが、聖書、神話、童話などを題材に描かれている少女を読み解くというものです。

最初に出てくるエピソードはエデンの園エヴァが食べてはいけないといわれた林檎を食べてしまう話です。他にも禁忌系の物語は山ほどあるのですが、そこに共通しているモチーフが「青ひげ」の話だと、このようになります。

青ひげは新妻に鍵の束を与えながら、一つの小さな鍵を示します。廊下の奥の小部屋を開くものだが、決して開いてはいけないと禁じ、旅に出ます。
(p.16)

開けたらいけないのなら、何で鍵を渡すのか。浦島太郎の玉手箱も同じ原理ですね。そこに、開けるなと命じながら暗に開けることを期待している、という解釈があるわけです。

この本に紹介されている数々の物語の中で、女性がどう描かれているかというと、

「誘惑」、「嫉妬」、「好奇心」。そしてそれらと密接にかかわる「虚栄」。すべてが女性に本質的なものとされました。
(p.52)

白雪姫の場合、あれだけ念を押されていても、

「りんごの誘惑」
(p.56)

に負けてしまうのですが、このリンゴという果物も、エデンの園の禁断の果実を連想させます。アダムとエヴァは「善悪を知る果実」を食べましたが、命の木からは食べていないので、人間は死ぬ運命になったというのですが、死は必ずしも忌むべきものかというと、次のような解釈をしています。

死から照り返されることによって、一瞬一瞬の時間に意味が生まれるのです。自分の時間に終わりがあることを知らないものにとって、ただただ砂のように連続していく時間とは何なのでしょう。死を知ることは人間にとって本源的な知であり、知ることの本源とは死の意味を知ることだと示されているのです。
(p.34)

生きることは死ぬことというのが、まるで武士道のようであります。

ところで、話は変わって白雪姫ですが、前から気になっていましたが、

礼節を貴ぶ宮廷社会で、眠っている初対面の若い女性にいきなりキスをするのはもちろん問題行動
(p.108)

ですよね。キスで目が覚めるというのは、オリジナルにはなかった改変だそうです。


少女が知ってはいけないこと
片木 智年 著
PHP研究所
ISBN: 978-4569701011