Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

疾風の河岸-はぐれ長屋の用心棒(22)

今日は鳥羽亮さんの「はぐれ長屋の用心棒」シリーズに戻って(笑)、疾風の河岸です。22作目ですが、あといくつ残っているのかな。

オープニングは雨。このシリーズ、雨のシーンから始まるのが結構あります。雨の日には居合の菅井が仕事ができないので、源九郎のところに将棋を指しにやってくる、というパターン。源九郎は毎度断るのですが、

「顔も洗ってないし、朝めしもまだだ」
「朝めしなら、おれが用意した。それとも、これからめしを炊くか」
(p.12)

菅井は握り飯持参で将棋を指しに来るので、源九郎も自分で飯を炊くのが面倒だから付き合ってやるか、というパターンなのです。

余談はさておき、今回の敵は黒鬼。武士の夜盗で黒頭巾で顔を隠しているので黒鬼なのです。現場に行って斬られた男を見た菅井は、

刀傷は、逆袈裟に斬り上げられたものだった。居合の抜きつけの一刀で、斬り上げた傷ではないか、と菅井はみた。
(p.27)

達人なので傷口から斬り方が分かるのです。その後、菅井は江原という男に出会います。

田宮流居合の道場で同門だった男である。
(p.29)

居合遣いが出てきた。怪しい匂いがプンプンしますが、この時点では歓談して別れます。その後、材木問屋の三崎屋から源九郎達に話があるというので行ってみると、黒鬼対策として、用心棒になってくれないかという話。用心棒が店で寝泊まりしていれば、強盗もあえて押し込んでこないだろうというアイデアです。押し込んできたら片付ければいい。前金で百両出すというのでもちろん源九郎達は話に乗りますが、相手も武士、手練れです。

襲撃を前もって察知した源九郎達は、策を練ります。

長屋に走って、菅井や島田たちに、三崎屋に来るように伝えてくれ。それに、腕っ節の強いやつを四、五人いっしょにな。
(p.147)

人手を集めておいて、押し込んで来たら大勢で待ち伏せていると思わせてビビらせて追っ払おうという作戦です。ブレーメンの音楽隊?

黒鬼がやってきてくぐり戸を壊して押し入ろうとしたら、くぐり戸が強化されていてなかなか壊れない。やっとぶち壊して入ろうとしたら源九郎が刀を突き出したものだからそれが肩にあたる。他の仲間が叫ぶ、

なかに、大勢いる。伏兵だ!
(p.157)
三十人はいるぞ!
(p.157)

そんなにいないと思いますが…。結局、相手がビックリして逃げてしまう。

その後、十日ほど後で、長屋で源九郎と菅井が将棋を指していると、

「黒鬼党ですぜ!」
いきなり、茂次が声をあげた。
(p.161)

源九郎は三崎屋に入ったのかと訊いたら、三崎屋ではなく市橋屋だという。

「市橋屋なら、わしらとかかわりはない」
(p.162)

クールですな。ただ、仲間割れで黒鬼が一人死んでいるというので、菅井が気になって駆け付けてみると、

「江原……!」
(p.168)

斬られていたのは江原だったのです。やはり悪い仲間になっていた。押し込んだところを見られたので女を斬れと命じたら、江原は女は斬らんといって逆らったので、それで斬られてしまったのです。

斬ったのは、道場の師範代だった柳川という男。江原には病気で寝たきりの千佳という妻がいるのですが、地下は江原が死んだと聞き自害してしまうのです。これで菅井に火が付いた。

ラスボスの柳川と闘うシーン。

江原と妻女の敵を討ってやる
(p.268)

江原は菅井の師範代だった男なので強敵。菅井が風上に立って風を見方にして戦うシーンは見ものです。

 

疾風の河岸-はぐれ長屋の用心棒(22)
鳥羽 亮 著
双葉文庫
ISBN: 978-4575665093