Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

なんで、私が早慶に!? 2020年版

今日の本は「なんで、私が早慶に!? 2020年版」。アーク出版。本というより、四谷学院のパンフレットみたいな感じではあるが、個人的にはそんなことよりも、なんで2019年に2020年版!? ということの方が気になる。この本が発行された 2019年2月には、まだ2020年の入試は微塵も始まっていないのだ。

この種の本は、当然といっていい位、最終的に成功したレアケースしか紹介していないから面白い。大逆転満載。不合格体験記なんて、例の東大受験本位しか思いつかない。まあ途中の挫折期の話は不合格体験だという解釈もできそうだけど。

ということで、出てくる例を紹介すると、プロ野球選手を目指すも挫折して進学に進路変更した汐田くん。慶應法を目指すのだが、その理由が、

「私立のいちばん上」だから。
(p.16)

そんな理由でええんかい。この時点のマーク模試の結果が、英語78/200点だという。そこから英語ばっかりやって160/200点まで上げたそうだが、この得点、慶應法が目標なら、全くお話にならない低得点だ。ていうか慶應ってセンター試験関係ないよね?

で、ここてら四谷学院に入って55段階個別指導をやったら、センター本番は200/200点が取れたという。これは多分、野球部で鍛えた根性がモノを言ったのではないか。野球だって受験の役に立つ。蛇足しておくとセンターを受けたのは滑り止めのつもりらしい。とにかく全力を出し切って慶應法に合格したというのだが、これはかなり危ない橋を渡っているような気がする。

まあ合格すればどうでもいいことなんだが。

次に紹介したいのは、現役でMARCHも全落ちの濱名くん。中央大、法政大はセンター利用で不合格、立教と青学が一般で不合格。そこで、別に得意でも何でもない数学で慶應商学部を受けることにする。

その選択肢が既に「?」なんだけど、相性がよかったんじゃないかな。数学の偏差値が40から60まで上がったという。それでも、

慶應は絶対に落ちると思って気落ちした。ところが、受かっていたのである。
(p.26)

みたいな感じ。これも結構レアだと思うんだよね、もしかすると100人のうち1人の成功例かもしれない。失敗した人の事例は必要ない。なぜなら、単に間に合わなかった、思うように上がらなかった、で尽きる話だから。でも相性とかあったらワンチャンあるよな、という話にしたければ、多分何か持ってないとダメだと思う。濱名くんの場合は信念かな。数学でいくというガンコな気持ちが幸いしたのかもしれない。

次の事例もなかなか凄い。

坪野航くんは、高校を2年で中退し、2年間、鳶職として働いていた。しかし、「やはり学歴は必要」と思い直して大学受験を決意。
(p.44)

一体何があった?

とにかく、中学レベルから早慶に挑戦して、慶應経済とSFC、早稲田政経、早稲田商に合格したという。鳶スゲー。でも、卒業してからどうするのか、とても気になる。もしかして鳶 again 的なストーリーもあるのか?

33歳で慶應受験の話も凄い。センター模試が174,639/175,891 番だというからほぼ底値、先日 twitter でバズっていた駿台模試2位とはえらい違いだ。この人が予備校行って2年連続不合格の35歳のときに、敗因を

「基礎力もないまま受験本番に突入したこと」が原因だと気付きました。
(p.58)

もっと早く気づけよ、という気もすれば、逆に「よく気付いたなぁ」という気もしてくる。この人も四谷学院に入って基礎からやり直して慶應合格、というパターンなんだけど、それからどうなったの、どうするつもりなの、というのが猛烈に気になる。

この本、こんな人が多いから面白い。つまり、何で早慶なの、入って何やりたいの、卒業したら何するの、ていうのがサッパリ分からないんだよね。私自身が「コレ学びたい」という理由で大学に入ったからかもしれないけど。コレって何だよ、というのは黒歴史だから教えないけど。

最後に現役高校生あるあるを紹介したい。

高1、高2の頃は「3年になったら始めよう」と考え、高3の春には「部活を引退したら始めよう」と決意する。ところが、いざ部活を引退すると「夏休みからが本番だ」と思うようになる。その夏休みもあっという間に終わって、気がつけば、すでに秋……。「もう間に合わない」と焦り、結局は「浪人すればいい」
(pp.120-121)

そういう人って浪人しても勉強しないで、「また来年がある」とか思うような気がする。


なんで、私が早慶に!? 2020年版
受験と教育を考える会 著
アーク出版
ISBN: 978-4860591991