Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

銀簪の絆-はぐれ長屋の用心棒(28)

今日は長屋シリーズに戻って「銀簪の絆」。銀のかんざしなんて、お洒落ですね。こういうアイテムは今でも流行すれば面白いと思うのですが。

今回の悪役は、

天一味の仕業らしい
(p.23)

一味といわれると何となく大物感が強化されますね。七味だと辛さの中にも風流あり、みたいな。聖天一味は大店に夜盗として忍び込み、千両箱を盗むという豪快な泥棒集団です。賊の名前の由来は浅草聖天町のようです。

そして、今回のゲストはお熊の弟です。

「舎弟の猪八です。……しばらく、長屋で厄介になるんで、挨拶に連れてきたんです」
(p.37)

猪八戒?

猪八は仕事にも行かずに、遊び歩いてるんですよ。
(p.58)

お熊が嘆いています。そこで、源九郎が猪八に説教をすることになります。源九郎は、猪八に手を見せてみろといいます。

わしは、掌を見ただけで、相手の腕のほどが分かるのだ
(p.76)

その後に、まんざら嘘でもないとか出てくるので、つまり嘘ですね。ハッタリなわけですが、老人にそういうことを言われると信じてしまいますよね。この猪八はどうも挙動が不審です。博奕で借りた金が膨れ上がっています。

七、八両が五十両にもなったのか
(p.152)

だから奨学金を借りろとあれほど…

さて、一味の親分は、普段は店の主人として暮らしているのですが、

「橋のたもとに、古着屋があるな」
「はい」
「あるじの名を知ってるかい」
久兵衛さんですが…」
(p.227)

またマドマギか。いろんな時代で仕事してるなぁ。

さて、源九郎達は、一味が三崎屋に押し込むという情報をgetしたので、罠を張ります。

天一味が三崎屋に押し入ったとき、待ち伏せて一気に襲えばいい
(p.240)

現行犯で逮捕するわけですね。

今回のラスボスはワルプルギスの魔女…ではなくて渋谷という名前です。渋いです。横雲という必殺技を持っています。一味がお縄になっているドタバタ騒ぎの時に、一人だけ外に逃げ出したのですが、なぜか外で源九郎を待っています。

「渋谷、逃げないのか」
源九郎が対峙して訊いた。
「逃げるのは、おぬしを斬ってからだ」
(p254)

無駄にカッコイイ。初手は互角で、菅井が駆け付けるのですが、源九郎のスイッチが入っているので「手出し無用」とか言って助太刀させない。とかいってるうちに捕方がわさわさと大勢駆け付けてしまうので、これでは勝負にならないとみて、渋谷はとりあえず勝負は預けたと言って一時撤退します。

源九郎達は捕まえた一味から渋谷のアジトを聞き出して、そこに向かいます。源九郎が呼びかけると渋谷が出てくる。逃げないのかと訊いたら、

「逃げる気なら、今朝のうちに江戸から出てるよ」
(p.274)

源九郎が勝負しに来るのを待っていたというのです。なかなか渋い奴です。こういうのは味方に引き入れてもいいと思うのですけどね。


銀簪の絆-はぐれ長屋の用心棒(28)
鳥羽 亮 著
双葉文庫
ISBN: 978-4575666243