Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

娘連れの武士-はぐれ長屋の用心棒(31)

今日は長屋シリーズに戻って、「娘連れの武士」、これは31話です。いつものように菅井が居合の芸をしていると、

ひとりの女児が三方に走り寄り、いきなり竹片をつかむと、
エイッ!
と声を上げ、菅井に投げつけた。
(p.14)

これが菅井に当たってしまうのです。.笑。どっとわらいですね。修行が足りないぞ。しかもこの女児、「お父上」とか言い出す。誰?

女児の名前は、おふく。これが家も分からないというので要するに迷子です。菅井と一緒に行くといって泣き出すので、この場面は菅井の負けです。長屋に連れて行きます。おふくは叔父上と一緒に来たというが、親の名前も叔父上の名前も全部謎。しかし長屋の連中はこういうのはプロなので、すぐに叔父上を見つけて連れてきます。

それがし、寺井戸半助ともうす。ふくの伯父でござる。
(p.32)

老人が現われた!

源九郎の見立てによれば、剣の腕もなかなかのジジイです。しかし、寺井戸にも、ふくの親の名前は言えないのだという。これでは何も進んでいない。しかも、寺井戸と、ふく。しばらく長屋に住まわせてくれという。何か分からんがそうなったところで死体が発見されます。

源九郎と寺井戸が死体を見に行くと、死体は寺井戸の知人でした。名前は平松、横沢藩の藩士だということで、町方は手を引くことなります。当時は、町人の事件は町方が担当し、武士のいざこざは藩が始末をつけることになっていたようです。

さて、ふくの命も狙われているということで、長屋の用心棒達に、寺井戸が正式に護衛を依頼します。三十両。金が動けば用心棒も動きます。命を狙っているのは誰かを探ることになりますが、これはまあ簡単なことで、勝手に相手がおふくを探しに来るから、その後をつけてやればいい。のではありますが、相手が5人で襲ってきた! (笑)

5人といっても武士は3人なので、源九郎と菅井、そして実は割と強い寺井戸が相手をします。しかし寺井戸の相手は馬淵新兵衛。今回のラスボス、一刀流の達人で強敵です。これに対して源九郎の相手は割と雑魚。菅井の相手は居合で斬られて左腕がほぼ切断されてしまって逃げる。馬淵も仕方ないのでここは逃げるしかありません。寺井戸は肩を斬られたが浅手です。

それにしても、華町どのも、菅井どのも見事な腕だな
(p.97)

そういう小説ですからね。寺井戸も超強いんですけどね。

とかいってる間にふくの母親も命を狙われていて危ないから何とかしてくれ、という話になってしまう。一緒に護衛した方がいいということで、長屋に母親のおせんがやってきます。こうなると相手も総攻撃してくるのでは。策がないと危ない。いつものパターンで、タスクを1つずつ片付けていく作戦に出ます。軍資金が百両追加されたので工作も気合が入ってくる。

まず与野吉という下っ端を拉致して吐かせるのですが、こいつがベラベラと結構喋る(笑)。敵メンバーが分かってくるとやりやすい。次は佐野という武士が散歩しているところを拉致すると、これもベラベラと喋る。もう少し骨のある奴はいないのか。

最後は馬淵と寺井戸が再度対決します。ところが、ここに源九郎が近付いた。近付いただけなんですが、最強戦士がやってくるのはやはり気になる。そのスキに寺井戸が遠慮なく攻めたものだから、流石の馬淵もドジを踏んで、最後は右手を斬り落とされてしまい万事休す。情報が欲しいので、源九郎達は馬淵を捕えて血を止めて話を聞きます。寺井戸が話しかけます。

「おぬしが、身につけた一刀流が泣くぞ」
「…これでは、一刀流も遣えん」
(p.245)

片手がないと一刀流どころか一腕流だし。馬淵は知っていることを話した後、切腹するから介錯してくれと寺井戸に頼み、寺井戸はこれを承知します。切腹シーンを見ていたパシリの猪七は、お前も切腹するかと言われたりすると、もうビビって何でも話してしまうわけです。


娘連れの武士-はぐれ長屋の用心棒(31)
鳥羽 亮 著
双葉文庫
ISBN: 978-4575666786