Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

八万石の危機-はぐれ長屋の用心棒(33)

今日は長屋シリーズから「八万石の危機」。八万石といえば、登場するのは16巻「八万石の風来坊」で出てきた青山京四郎様です。最初からピンチばかりだったような気もしますが、まだ危機があるのか。

源九郎と孫六が珍しく二人で波乃屋で飲んだ後に、武士の斬り合いに遭遇してしまいます。二人対四人のバトルで、二人の側から助太刀をお願いされてしまう。孫六は逃げようといいますが、時既に遅し。

「逃げたくても、逃げられん」
(p.18)

相手は四人、孫六は戦力外なので源九郎を加えても四対三の戦い。しかも相手が案外強い。絶対的不利な状況ですが、孫六が近くから人を集めてきて騒ぎにしてしまいます。すると、どういう訳なのか分かりませんが、相手としては騒がれるのは都合が悪いらしく、そそくさと退散してしまいます。

斬られるところだった二人は前園誠一郎と里之助。田上藩の者です。田上藩ってどこかで聞いたような…っていうか、現藩主はあの青山さま。となると手助けしないわけにはいかない。

この二人、実は国許で親を斬られており、その敵討ちで出てきたのですが、斬った相手は七人。敵は出奔して江戸にいるというのですが、いくら何でも二人で七人は無茶というか、早速四人相手に返り討ちにあう寸前に…というのが冒頭のシーンです。二人は上役の高野と一緒に長屋を訪れて、源九郎たちに正式に仇討ちの助太刀を頼みます。とはいえ手練れの七人を相手というのは源九郎としても無理がある。しかし礼金として出てきたのが百両。青山さまとは面識もあるし、百両出されて断る奴はこの長屋にはいません。

青山さまと源九郎達が相談するシーンも出てきます。流石にはぐれ長屋で殿様と会うわけにはいかないので、会談は料亭になります。作戦会議では、長屋に囮を置いておき、探りに来た敵を尾行して住処を突き止める、というアイデアが出て、大目付の高野は、長屋に町人に化けた目付を住まわせておいて、敵が現われたら尾行させようというのですが、京四郎いわく、

「高野、伝兵衛店には、剣の腕だけでなく、尾行や張り込みに長けた者たちがいるのだ。まかせておけばいい」
(p.101)

16巻、17巻のドタバタ騒ぎでよくご存知なのです。

あとはまたしてもドタバタ、急襲したと思えば罠で挟み撃ちに、みたいなシーンが次々と出てきます。しかも話は家老暗殺計画が発覚するところまで発展して、もはやただ事ではなくなってくるのですが、最後はいつものパターンでちゃんと仇討ちもできて予定調和となるわけです。

今回の見どころは、八万石のお殿様、青山京四郎のキャラ。相変わらずってところ。暴れん坊将軍よりはすこく真面目な感じですが、まあヤンチャ系ですね。若様感があってよろしゅうございます。


八万石の危機-はぐれ長屋の用心棒(33)
鳥羽 亮 著
双葉文庫
ISBN: 978-4575667189