Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

美剣士騒動-はぐれ長屋の用心棒(30)

今日の長屋シリーズは「美剣士騒動」、これは30作目ですね。美剣士というと魔法少女みたいなのをイメージするかもしれませんが、もちろん男です。

源九郎と菅井が浜乃屋で飲んでいると、斬られた武士が逃げ込んで来ます。名前は

室井半四郎でござる。
(p.32)

このシリーズ、源九郎が年配なのでジジイとか多いのですが、この武士はイケメン。浜乃屋のお吟がポッとなってしまいます。源九郎はこれが面白くないのですが、悶々とするだけで口には出さないから面白い。我慢するのが流石は武士です。とりあえず追手を退けて長屋に匿うのですが、この室井、何で斬られたのかというと、本人も分からないという。ただ、

家に相続をめぐって揉め事があるのです。
(p.43)

相続はいつの世も骨肉の争いになりますね。しかも、

室井家は、本郷に屋敷のある三千石の旗本だという。
(p.57)

ってことで、結構エリートのようです。相続といっても世継ぎということになると話がデカすぎる。普通に邪魔な奴を殺すレベルの争いが発生するわけです。源九郎はヒントを求めて、室井が修行した道場に話を聞きに行きます。アポなし訪問すると、道場主が会ってくれます。

「わしが福原峰右衛門だが――。華町どのは、だいぶ剣の修行を積まれたようだが、何流かな」
(p.87)

剣の達人は一瞥しただけで相手の力量が分かる、といいますが、プログラマーはそんなの全然分かりませんね。コードを見ないと。この福原もジジイなのですが、なかなか出来る感じです。しかしこの後出てこないのが残念。とかいってるうちに源九郎が待ち伏せされてピンチです。今回のラスボスは大槻。

「上段霞崩し……。よくかわしたな」
(p.106)

冗談のような技名ですが、これが必殺技。源九郎たちの分析によると、

「上段霞崩しは、初太刀で敵の刀をたたき落として構えを崩すことから名付けられたのではないかな」
(p.126)

つまり単なる力技ですね。

そうこうしているうちに、はぐれ長屋で暮らしている室井のところに美少女がやってきます。名前はお春。春が来た。

お春は小石川に屋敷のある千石の旗本、宅間喜十郎の次女だという。
(p.199)

もう結婚が決まっているのですが、世継ぎが結婚するなんていうとさらに危険ゾーンに突入してしまう。しかしお春は長屋に一緒に住むとか言い出します。金持ちの考えることは分からん。もっとも、勝手知ったる場所で戦力を集めて籠城した方が、戦うには有利という考え方もあります。そして本当に攻めてくる。

後はいつものパターンで、逃げる相手を尾行して塒(ねぐら)を突き止め、一人ずつ片付けていく。全部一度は大変だからタスクは一つずつ片付ける、マネージメントの基本ですね。

最後は上段霞崩しを破って武士の情けでトドメを刺してやるというハッピーエンドです。


美剣士騒動-はぐれ長屋の用心棒(30)
鳥羽 亮 著
双葉文庫
ISBN: 978-4575666625