Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

はぐれ長屋の用心棒―華町源九郎江戸暦

今日は「はぐれ長屋の用心棒」、華町源九郎 江戸編、つまりこのシリーズの1作目です。やっと1作目が出てきました(笑)。文庫本表紙で子供と一緒に走っているのは菅井ですかね。

出だしはこんな文です。

軒下から落ちる雨垂れの音が聞こえる。
(p.7)

クイズ「東大王」の問題に出てくるかもしれませんから覚えておきましょう。最初は長屋の様子が描かれ、その後に源九郎と菅井のコンビが登場します。

源九郎は五十五歳。五十石の貧乏御家人だったが、倅の俊之介が、君江という嫁をもらったのを機に家督をゆずって家を出たのである。
(p.9)

核家族化しているわけです。ちなみに菅井は四十八歳という設定ですから7歳年下なんですね。

はぐれ長屋は、本所相生町一丁目にあった。堅川沿いの通りに並ぶ表店から細い路地を入った先にあり、裏手には回向院の堂塔の甍や相輪などが、町家の家並のみこうに見えていた。
(p.11)

最初の事件は川で死体が見つかったという事件から始まります。拷問の跡があります。なぶり殺して捨てたと見るのですが、源九郎は死体が堅川で見つかったことに疑問を持ちます。捨てるのならもっと大きな川にすべきだろうというのです。

その後、死体の子供らしき男の子が迷子になっているのを源九郎が見つけます。名前は吉松。吉松を長屋まで連れて行ったところ、謎の武士が現われ、関わるなと警告するのですが、これは軽く返り討ちにします。源九郎は鏡新明智流という設定ですが、

この流は桃井八郎が開創したもので、安永二年に江戸日本橋茅場町志学館と称する道場をひらいて流名をひろめた。桃井春蔵が二代目を継ぎ、南八丁堀大富町蜊河岸に道場を移した。
(p.41)

志学館は江戸三大道場の一つで、実在していました。興味のある方はググってみてください。

第二章は、菅井が登場します。

菅井は、田宮流居合の達者だった。
(p.61)

このシリーズでは毎度お馴染みの光景ですが、菅井は竹片を投げさせて居合切りで斬るという芸をやって小銭を稼いでいます。場所は西両国の広小路なのですが、

芝居小屋、水茶屋、床見世などが建ち並び、西瓜、飴、植木売りなどがいたるところに露店を出し、子供相手の風車、手車、無視、亀などの物売りが声を張り上げ、店の隅では大道芸人が客を集めている。
(p.60)

なかなかの雰囲気です。

さて、菅井は見つかった死体、藤八郎というのですが、情報を集めているとチンピラに囲まれてしまいます。もちろん軽くあしらって、軽く腹を切ってやったので動けない奴から話を聞き出しますが、尾行されてピンチ。

さてさて、途中ごっそり省略して、源九郎たちが匿っていた吉松を敵は本気で拉致しに来ます。この時、菅井が相手にするのは深尾惣八郎、なかなかの腕というか、何と菅井が負けてしまいます。もっとも、腕は深くえぐられましたが、斬り落とされたわけではない。深尾は命まで取る気はないらしく、吉松を拉致してトンズラです。

この後の展開はグダグダで、よくある展開というか、源九郎達はかなりあくどい手口(笑)で相手を片付けてしまいます。このシリーズの特徴として、特に他の娯楽系時代物と違うのは、イイモノ役が結構ズルいというか、ちょい悪いことをする、ということろで、金をもらわないと本気で仕事しないとかもそうですけど、そこが逆にリアルで何か面白いわけです。最後のお約束のラスボスバトルは、源九郎と深尾が戦います。深尾は最後まで絵にかいたような武士なのが、何か悪役なのにどうも憎めないです。


はぐれ長屋の用心棒―華町源九郎江戸暦
鳥羽 亮 著
双葉文庫
ISBN: 978-4575661576