Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

黒衣の刺客―はぐれ長屋の用心棒

今日は「はぐれ長屋」の第7話、「黒衣の刺客」です。黒衣というのは盗賊の着物ですね。長屋に住んでいる房吉という大工が殺されます。源九郎は殺される前に黒い猿のような男を見ていて、男の目の下にはホクロがあったといいます。

房吉は木菟一味を見たのではあるまいか
(p.66)

と予想します。木菟(みみずく)一味というのは泥棒集団で、黒装束で顔も隠していて、頭巾が木菟に似ているのでそう呼ばれているそうです。そんな名前が付くということは、結構目撃されているわけですね。案外マヌケな盗賊ですね。

房吉の妹、おせつは、敵討ちに燃えています。

「あたし、兄さんの敵を討ちたい」
(p.35)

こんな感じでいつものパターンですが、相手は手練れの用心棒を雇っていますし、おせつは何の技もありませんから、当然、長屋の用心棒たちに丸投げすることになります。ちなみにホクロの男も片付けることになりますが、目の下にホクロがあるというだけで本人と断定していいものでしょうかね。まあ滅多にないことだとは思いますが、人違いとかだとどうするのだろう。

最後の決闘シーンは、菅野彦三という浪人との一騎打ちです。

ずいぶん昔のことだが、一刀流中西派小俣道場で俊英と謳われた男である。その後、巷の噂で室井とかいう無頼浪人と賭場などに出入りし、江戸の闇世界で人斬り彦三と呼ばれて恐れられていると耳にしたことがあった。
(p.279)

「江戸の闇世界」というのが気になりますね。江戸の風俗的な本は結構読みましたが、流石に闇世界の話は出てきません。表に出てきたら闇世界とは言いませんよね。

ところで、風物詩として、大川の川開きの話が出てきます。

大川の川開きは、五月(旧暦)二十八日。この夜、両国では盛大に花火が打ち上げられ、川端や橋上は見物客で大変な賑わいを見せる。この日から、いよいよ本格的な夏の到来である。
(p.127)

大川というのは墨田川のことです。花火大会は令和の今でも続いています。


黒衣の刺客―はぐれ長屋の用心棒
鳥羽 亮 著
双葉文庫
ISBN: 978-4575662504