Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

おとら婆―はぐれ長屋の用心棒

今日は「はぐれ長屋…」の「おとら婆」です。14冊目のようです。

最初から苦言じゃないですが、老婆がならず者に袋叩きになっているシーンから始まるのですが、これはいけませんね。読んだ瞬間にアレだなと分かってしまいます。よくあるパターンですね。

しかし今回は出てくる浪人がいいです。その名は瀬川弥十郎。浪人なんですが、職業は辻斬り。これが辻斬りで一人殺したところで声をかけられます。声をかけたのは権六。職業は、

「はい、押し込み強盗です」
(p.80)

類友ってやつですね。しかもうまく話を持ち掛けて、はぐれ長屋の源九郎と菅井を斬ってくれないかと仲間に誘います。

この瀬川が谷颪(たにおろし)という秘剣を遣います。

尋常な剣ではなかった。二の太刀がおそろしく迅い。菅井にすら袈裟に斬り下ろした太刀筋が見えなかったのである。
(p.195)

今まで何冊か読んでみて、菅井というのはアクセラレータといい勝負じゃないかと思っていたのですが、上には上がいるようです。フィクションなのでいくらでも速度が上がります。

駆け引きの妙も面白い、ていうか基本、この世界は先手必勝なのですが、寝込みを襲っていると思わせておいて実は罠で大勢待ち構えているとか、結局卑怯な方が勝ちます。長屋軍団、割と卑怯です(笑)。ただ、最後はお約束で尋常な勝負。瀬川と菅井です。瀬川の構えが、

下段に構え、切っ先が地面につくほど下げた。谷颪の構えである。風に総髪や袴が揺れたが、刀身は静止したままぴくりとも動かない。
(p.281)

カムイ伝に出てくる浪人みたいな感じですね。笹一角とか、水無月右近とか。

 

おとら婆―はぐれ長屋の用心棒
鳥羽 亮 著
双葉文庫
ISBN: 978-4575663594