今日は「はぐれ長屋の用心棒」シリーズから、「湯宿の賊」。箱根はこの前の台風でとんでもないことになっているようですが、今回は箱根で湯治中の賊と対決というストーリーです。ちょっと違うか。
華町源九郎と孫六は、今回のゲストキャラのお静と三人で江戸を出て箱根に向かいます。品川、平塚と向かって小田原に向かうシーン。
西側に酒匂川の流れが見え、その先に箱根連山と富士の霊峰がそびえていた。南方に目を転じれば、松林の間から相模湾の青い海原が見える。
(p.110)
浮世絵のような光景が思い浮かびます。もちろん要所で敵が襲ってくるので油断はできません。湯治場に親分が来ているという噂を聞きこむと、
「どこの湯だ」
「塔ノ沢でさァ……」
(p.143)
使徒が出てきそうですね。
今回の話で面白いのが、最後に真犯人が分かったところで片付けに行くのですが、この時に、
「わしらが盗賊の恰好をするのか」
(p.269)
町方と協力して動くとマズいことがあるので、ドロボウのコスプレまでして、盗賊にやられたように見せかけて殺してしまおうというのです。ヒドい用心棒達です。
もう一つ面白いのが、今回の敵方の浪人、宇堂恭之介。菅井と同じく居合の達人です。
「宇堂か。やつは同じ道場に通ってたわけではないが、おれと同じ田宮流居合を遣う。人斬り犬などと呼ばれて、恐れられた男だ」
(p.132)
この宇堂が最後にとんでもないことをするのです。いつものパターンかなと思って読んでいたら、見事にやられた感があります。
湯宿の賊―はぐれ長屋の用心棒
鳥羽 亮 著
双葉文庫
ISBN: 978-4575662634