Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

恐怖小説キリカ

今日紹介するのは「恐怖小説キリカ」。この本は素晴らしいです。なにしろ酷評すると殺されてしまうのです。アマゾンの低評価ネタは「恋は雨上がりのように」にも出てきましたが、やはりクリエーターの皆さんは評価を気にするのでしょうか。ある種の作家は他人の評価など全く無視して作品を作るようですが。

ただ、この作品のアレはちょっと酷評の使い方が違います。

「読者はちょうどええねん」
(p.238)

読者はちょうどええ、というところに傍点がふってあります。この作品、関西弁が出てくるのですが、ていうか、大阪弁? 私は大阪生まれの大阪育ちですが、この作品の大阪弁はかなり自然です。何か不自然な作品って結構あるんですよね。

オンラインでコミュニケーションできるような世界になってから、知らない人から物理的に攻撃されるというリスクが追加されました。いろいろネット上で攻撃する人はたくさんいますが、そういうのは無視すればいいだけです。メンタルが弱ければそこで潰されてしまうかもしれませんが、気にしなければ何の影響も受けません。しかし現実世界は違います。本当に刺されたら大怪我するし、寝ている時に放火されたら焼け死ぬでしょう。そこまでのリスクを承知した上でネットに参加している人がどれ位いるのでしょうか。

人間が一番コワイとか言うてるやつも、対策なんかいっこもしてへん。
(p.238)

作品に出てくるのは正攻法です。本人が明示している情報を集めて特定する、それだけです。1つの情報で選択肢を半分にできれば、10の情報があれば2^10で候補を1/1000に絞れます。20あれば100万分の1です。私なんか何万も投稿していますから、完全に個人が特定できてもおかしくないのです。</>

この作品で人間がやっていることを、今後はAIが勝手にやるような時代になっていきそうな気がします。

 

恐怖小説キリカ
澤村 伊智 著
講談社文庫
ISBN: 978-4065152683