Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

浜村渚の計算ノート 6さつめ パピルスよ、永遠に

勢いで6さつ目、行ってしまいますよね。「浜村渚の計算ノート 6さつめ パピルスよ、永遠に」。いくつかのエピソードに分かれているのはいつもの通りです。浜村渚って誰とか前回も全然説明ないけどいいですよね?

1つ目の作品、「log10.『シスター・メルセンヌの記憶』」のネタは完全数。この話に出てくる居森さんは卵を割るのに6秒、かき混ぜるのに28秒、焼くのに496秒を使います。この6、28、496 って何なの、それが完全数で、

その数を除いた約数を全部足すと、その数になる
(p.31)

という性質を持っています。タイトルにシスターという言葉が出てくるのは舞台が修道院になっているからですが、考えてみれば修道院というのが日本だとかなり珍しい存在ですよね。微妙な宗教色があるのは「黒い三角定規」という集団を宗教的に見ている側面もあるからでしょうか。

2つ目の作品、「log.100『ナポレオンが見つけてくれた』」は、トランプのゲーム、ナポレオンが出てきます。この本は巻末にナポレオンのルールが紹介されていますが、高校のときに部活が終わった後にやったような記憶があります。殆ど忘れ去られた記憶なんですけどね。数学ネタとしてはナポレオンの定理が出てきます。

一般的な三角形の周りに、各辺を一辺とする三角形を作り、それぞれの重心を結んで三角形を作ると、それも必ず正三角形になるんです。
(p.153)

これがナポレオンの定理といいます。それがどうしたという感じですが、もちろん強引に犯罪のトリックに結びつけています(笑)。

3つ目の作品、「log 1000.『集合と孤独のジュース』」は、ピーチ★ど★もるがん、という名前のアイドルが出てきます。平仮名にしたらアイドルっぽくなるという法則はないような気がしますが、とりあえず黒い三角定規の団員なのです。ネタは集合です。

ド・モルガンの法則です。
(p.188)

この有名かつ簡単な法則を言葉で説明するのは難しいですが、本にはヴェン図が出てきます。最近はヴェン図というのですか? 私は中学校でベン図と教わったのですが。

4つ目の作品「log 10000.『魂はピラミッドを彷徨えり』」はリンド・パピルス古代エジプトの数学が話題になっています。

古代エジプトではさ、パンを分けたり、土地を測量したり、牛を数えたり、そういう実生活に密接に結びついた数字が発展した
(p.264)

この話は4個のパンを5人で分ける話に続くのですが、具体的には、まず4個のパンのうち3つを2つに割って、1/2を5人で分ける。残った1/2と1個のパンを、1/4のサイズt6個にして、5個を5人で分ける。残った1/4を5分割して5人で分ける。これで、

1/2 + 1/4 + 1/20

ずつ等分に分配できる、というのが古代エジプト流なのだそうです。一見面倒な感じもしますが、日常的に似たようなことは結構ありそうですね。ただ、最後までちゃんと分けるよりも、どこかで面倒になって誰かが全取りしていそうな気はします。


浜村渚の計算ノート 6さつめ パピルスよ、永遠に
講談社文庫
青柳 碧人 著
ISBN: 978-4062931311