変身といえばカフカのイメージが強烈なのですが、もしかして仮面ライダーという人も多いのでしょうか。今日の変身は、東野圭吾さんの小説です。脳の移植手術を受けた人の人格が変わっていくという、何でしょうね、ホラーっぽい感じもしますが。Wikipedia にはサスペンスと書いてありました。
腎臓や角膜のような部位の移植だと、移植する人とされる人の区別はある意味明確なのですが、脳を移植したらそれはどっちの人なのか、という難問が発生します。
この小説、本人が知らないところで人格が混在しているのでいろいろややこしい現象が起きます。
こんな朝は鏡を見る時に緊張する。そこに知らない人間が映るような気がするのだ。
(p.98)
徐々に人格が変化するというのは他の小説でもあったような気がしますが、もしかしたらマンガかもしれません。
変化していく人格がちょっと独特で、キレたところがあります。この性格も怖いです。
仮に死刑という判決が下されても構わない。どうせ人間はいつか死ぬ。それが早いか遅いかというだけのことだ。人間の命なんてものは、血相を変えてまで延ばすほど値打ちのあるものじゃない。
(p.334)
人格が変わるといえば、こんなシーンもあります。
「待て」と番場がいった。奴は斜めに構えて俺を見た。「おまえ、何者だ?」
(p.287)
三葉ではないようですね。
最後に、これはそうだな、と思った一言を紹介します。
弱い人は本当のことをいわれるのをひどく嫌う。そして本当のことをいう人間を憎む。
(p.176)
人間は本当のことを言われると怒るそうです。
変身
東野 圭吾 著
講談社文庫
ISBN: 978-4061856981