今日は勢いで「妖談ひときり傘」に行ってしまいましょう。ひときり傘といっても傘のお化けではありません。傘を持った人がターゲットを囲んで逃げられないようにして殺してしまうのです。外からは何があったか見えないので分からないという、一石二鳥です。
今回は、天気を当てる名人が出てきます。おせんです。このおせんが宮尾といい感じなのですが、拉致されて行方不明になってしまいます。天気といえば、昔お向かいにいた小林さんは天気をよく当てました。小林さんが今日は雨が降ると言ったら、その時にどんなに晴れていても必ず雨が降ります。山の雲とか見れば分かるらしいのですが、残ねんながらお亡くなりになりました。
「わしにはわからぬよ、だが、わかる者はいる」
(p.28)
長年の学習が僅かなパターンの特徴を見分ける脳を作り上げるのでしょう。
さて、傘を持った殺し屋は、お天気お姉さんのおせんと繋がりがあります。雨が降らないと、傘を持った人間が集まるのは不自然だからです。自然と犯行は雨になる日を選ぶことになるわけです。そこで重要なのが20分毎の天気予報、みたいな話ですな。
後半は若年寄の京極備前守が南町奉行の根岸に相談にやってきます。もちろん怪異絡みです。
雨の降る夜になると、どこらかともなく笛の音が聞こえる
(p.190)
ひゃら~りひゃらりこ、的な感じですかね。夜の笛は確かに怖いですね。最近は夜になると謎の猫の泣き声が…
まあ冗談はさておき、今日は老人あるあるで閉めておきます。
「覚える力は衰えたけど、いったん覚えたものはなかなか忘れないのかね」
(p.166)
忘れようにも思い出せない、というのもありますけどね。このシリーズ、あと一冊でしたっけ?
耳袋秘帖 妖談ひときり傘
風野 真知雄 著
文春文庫
ISBN: 978-4167779207