Phinlodaのいつか読んだ本

実際に読んでみた本の寸評・奇評(笑)

砂漠の惑星

雑記が続いているので一冊紹介します。で、唐突に出てくるのが、スタニスワフ・レムさんの「砂漠の惑星」、SFです。

ネタバレでいきなり書いてしまうと、砂漠の惑星に降りると地上を支配していたのは機械だった、という話です。次のような説明が出てきます。

どんなに困難な条件のなかでも生きながらえることのできる、高度に専門化された、恒常性(ホメオスタシス)をもつ機械装置
(p.162)

人工知能というよりも、忠実に自分の生命(?)を維持する機械といったところでしょうか。こういう存在は案外怖そうですね。

生命は非常に多種多様な形態をとるか、でなければ、全然発生しないか、のどちらかです。
(p.105)

仮説としては面白いですね。地球はまさに多種多様なのですが、単一の生命体が進化した惑星が存在し得るのかどうか。競争原理がないと発展しないというのは何となく真理のような気もしますが。

登場人物ですが、まずホルパフ隊長。まさに隊長タイプです。

「(略) ヤゾン、われわれのスーパーコプターはどれだけの力の場に耐えられるだろうか?」
「一平方センチメートのル当たりに、たとえ数百万気圧の圧力がかかっても平気です」
「たとえとはどういう意味かね? 君は商人かね? わたしははっきりした数字をたずねているのだ。五百万気圧かね? 二千万気圧かね?」
(pp.149-150)

理屈っぽいというよりも、単にヤリニクイという感覚がひしひしと伝わってきます。細かいかというと、実はプログラマーにはこういう人がいても何も珍しくありませんが、まあとにかく、数字を把握しておくというのはマネージメントとしては基本なのでしょう。

このやりにくい隊長とコンビを組んでいるロハンが主人公です。

二人はすでに何光年となく飛行をともにしていたが、いまもって親密な間柄にはなっていなかった。
(p.15)

ありがちなコンビなのです。最後は殆ど特攻のような作戦を命じられますが、半分壊れてしまったような感じになりながら何とかやり遂げる最後のシーンが感動的です。

この小説に限らず、スタニスワフ・レム氏のSFに共通してみられるテーマですが、最後の方でロハンが思う言葉、

この宇宙のすべてがわれわれ人間のために存在しているように考えるのはまちがいだ
(pp.299-300)

これは実にアタリマエのことではありますが、なかなか考えさせられるコトではないかと思います。

 

砂漠の惑星
スタニスワフ レム 著
Stanislaw Lem 原著
飯田 規和 翻訳
ハヤカワ文庫
ISBN: 978-4150115661